米国が8月中の公表を目指している、中国向けの半導体製造装置輸出に関する新たな規制について、日本やオランダといった同盟国からの出荷が除外されることが7月31日、明らかになった。

バイデン政権は中国による先端半導体技術へのアクセスを阻止するため、「外国直接産品ルール(FDPR)」と呼ばれる現行の輸出制限を更に強化した新たな包括的貿易制限を準備している。新たな規制が発効すると、中国内で先進半導体製造を目指す取り組みで中心的な役割を担う6つ前後の工場について、多くの国から装置の輸入が出来なくなる。

米政府は7月、日本・東京エレクトロン(TEL)や蘭ASMLなど、米国外の半導体製造装置大手企業が中国向けの装置輸出を続ける場合、貿易制限措置をさらに強化することを検討していると各国政府に伝えており、今回の規制は中国向けが全出荷額の4割を超える両社を狙ったものになると見られていた。ところが、日蘭両国は自国企業への大きな損害と対中関係悪化を懸念し、米国の要求に反発した。結果的に両国企業に対する規制は見送られ、引き続き中国への輸出が可能となる。一方で、イスラエル、台湾、シンガポール、マレーシアなどは今回の規制の対象となるため、装置の輸出が難しくなる。

現行のFDPRは米国製の技術やソフトウェアを用いて作られた製品について、米国外で製造されたものも含め、米政府はその製品の輸出を差し止める権限を持つというものである。新たな規制では輸出規制の対象になる要件を厳しくし、米国の技術を含む半導体が組み込まれているだけで輸出が規制される可能性があるという。

輸出管理を管轄する米商務省の報道官はコメントを控えた。また、TEL、ASML両社の関係者もコメントを控えた。

なお、今回の輸出規制強化では、日蘭とともに、韓国についても輸出規制の対象外となっている。ところが、今後、SK Hynixやサムスン電子が製造するAI向けメモリ「HBM」についても対中輸出規制を強化するという案が出ているという。

米国では11月に大統領選を控えており、民主党では政権維持を目指し、年内に対中半導体規制をさらに強化する可能性も考えられる。