半導体メモリ大手のキオクシアは7月3日、3D NAND型フラッシュメモリ技術の第8世代BiCS FLASHを採用した2Tb(テラビット)QLC(Quad-Level-Cell)製品のサンプル出荷を開始したと発表した。2Tbの容量は業界最大。AI向けをはじめ、様々なアプリケーションにおいて高容量を実現し、拡大するデータ需要に対応する。

第8世代BiCS FLASHにはCBA(CMOS directly Bonded to Array)という技術が適用された。この技術はCMOS回路とメモリセルアレイを別々のSiウエハ上に形成した後、表面にCu bonding padを形成し、Cu direct bondingプロセスを用いてCMOSとセルアレイの表面同士を貼り合わせるものである。従来のCMOS under Array(CUA)構造と比較して、CMOSとセルアレイ間を接続するために必要となるhigh aspect ratio contact(HARC)が不要となり、配線材料として電気抵抗が低いCuを用いることが可能となった。加えて、CMOS形成後に連続的にセルアレイを形成するプロセスが不要になり、CMOSとセルアレイに最適なプロセス温度を用いることが可能となったことで、チップ面積の縮減と性能向上を実現した。

第8世代BiCS FLASHは独自のプロセスと革新的アーキテクチャにより、垂直方向と平面方向のスケーリングを実現し、CBAにより、ビット密度の向上と3.6Gbit/sの高速なインターフェイスを実現する。これをQLC製品に適用することで2Tbという容量を実現した。

新製品は同社のこれまでの最大容量モデルである第5世代QLC製品と比べ、ビット密度が約2.3倍、書き込み電力効率は約70%向上。また、218層のチップを一つのパッケージ内に16段積層することにより、業界最大となる1パッケージあたり4TBの容量を実現した(1つのチップ当たりの保存容量は128GB)。

なお、同社は同じ技術を用いて読み書き速度を落とす代わりにライト・リード性能を強化した1Tb QLC製品も開発し、同日よりサンプル出荷を開始した。シーケンシャルライト性能を約30%高速化し、読み取りレイテンシーを約15%改善し、1チップ当たりの保存容量は256GBに高めている。1Tbの製品はクライアントSSD、モバイル機器などのアプリケーション向けに展開するとしている。

新製品は大型記憶装置を手がける米ピュア・ストレージが採用を決定。2025年よりキオクシアの四日市工場で量産を開始する予定である。

出典:キオクシア ニュース