中国政府は5月24日、半導体産業のための新たな投資ファンド、「国家集成電路産業投資基金三期」を設立した。資本金は3,440億元(約7兆4,000億円)で過去最大となる。先端半導体を巡る米国による対中包囲網の強化に対抗し、独自の半導体サプライチェーンの構築を急ぐ。 

 中国政府は2015年発表のハイテク産業の育成策「中国製造2025」の議論をするなかで、半導体の国策ファンド「国家集成電路産業投資基金」を立ち上げた。2014年に開始した第1期は投資額が約1,400億元で、投資対象は半導体チップの設計、製造、パッケージング、テストなどの領域で、2018年5月に完了した。また、2019年に開始した第2期は投資額が約2,000億元で、投資対象は第1期よりも幅広く、ウエハの製造、設計ツール、チップの設計、パッケージングとテスト、装置、部品、材料など、様々な領域にわたる。第1期と第2期では、SMICやYMTCといった大手企業や工場を対象に100以上の投資を行った。 

 第3期の筆頭株主は財政省で、出資額は600億元、次いで国開金融有限責任公司が360億元、上海国盛集団有限公司が300億元を出資する。また、中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行、中国建設銀行がそれぞれ215億元ずつ出資している。 

 具体的な投資先は明らかになってはいないが、第3期では米国の対中輸出規制により輸入が難しくなっているAI半導体向けの製造装置や材料の研究開発を中心に使われ、結果的にHUAWEIを支援する狙いがあるという見方が広がっている。製造装置については、最先端製品ではない装置を使用してAIの能力を高める手法などの研究開発を強化するものと見られる。一方、材料では、シリコンウエハや化学品、産業ガスなどを製造するメーカーを育成し、完全国産化の態勢を急いで整える。なお、装置、材料等への投資に加え、HBM等の高付加価値DRAMの開発も重点投資対象となる可能性もある。 

 米国や欧州連合(EU)などは、次世代半導体製造に巨額の資金を注ぎ込んでいる。中国もこれと競うように今回、新たに過去最大の投資を決めた。半導体を巡る世界的な競争はさらに激しさを増す。