ルネサスエレクトロニクスは4月11日、甲府工場をパワー半導体生産の300mmラインとして稼働開始したと発表した。EVの普及に伴うパワー半導体需要増加に対応し、生産能力を増強するため。

甲府工場は敷地面積9万4,000平方メートル、クリーンルーム面積は最大1万8,000平方メートルで、今回稼働を開始したのはそのうち6,000平方メートルである。残りの1万2,000平方メートルの活用や、敷地内に新建屋を建設する可能性もあるとする。就業者は地元から新たに20人を採用したほか、他工場に散らばっていた旧工場時代の従業員40人も復帰し、約100人態勢で稼働する。

同工場では元々、150mm及び200mmウエハ対応の生産ラインを有していたが、2010年代前半に同社が大規模な構造改革を行う中、2014年10月に工場を閉鎖した。その後、2022年5月に同社は脱炭素化社会の実現に向けて増加するパワー半導体需要に対応するため、同工場を300mmウエハ対応ラインとして再稼働させることを決定。900億円規模の設備投資を行い、現在までに排水設備などの主要インフラやクリーンルームの内装、供給インフラの整備などを行ってきた。既に予定している半導体製造装置の7割が搬入済みであるという。

今後、同工場ではパワー半導体専用の300mmラインとして、IGBTやパワーMOSFETなどの生産を行う。4月11日より生産ラインのテスト稼働を開始、2024年7月~9月には試作を開始する。量産開始は2025年1月からで、量産が開始すると、同社全体のパワー半導体の生産能力は現状の2倍となる見込みである。

同社の柴田英利CEOは「2014年に稼働を停止した甲府工場が、10年後の今、300mmウエハ対応のパワー半導体生産ラインとして生まれ変わり、稼働を開始できたことを非常に嬉しく思う」としたうえで、「この甲府工場で生産するパワー半導体により、EVやAIの普及・拡大に従い、必須となる大量の電力の効率的な活用に貢献していく」と強調した。

出典:ルネサスエレクトロニクス ニュースリリース