車載半導体などを製造するルネサスエレクトロニクスは7月5日、SiC半導体の世界的メーカーである米Wolfspeedとウエハの供給契約及び20億ドルの預託金提供を発表した。これによりルネサスはWolfspeedから10年間にわたってSiCウエハの供給を確保することになり、同社が2025年に予定しているパワー半導体量産開始に向け、大きく前進するとしている。

10年間の供給契約により、Wolfspeedはルネサスに対し、150mmのSiCウエハを2025年から本格的に供給開始するのに加え、同社が先日発表した新工場「John Palmour Manufacturing Center for Silicon Carbide(以下、JP工場)」が本格稼働したのち、ルネサスに200mmのSiCウエハを供給する予定である。

なお、ルネサスは電気自動車(EV)や再生可能エネルギーの普及などによって急拡大するパワー半導体需要に対応するため、高崎工場へのSiCパワー半導体の製造ラインの新設などを決定しており、SiCウエハの安定供給が課題となっていたが、今回の契約によりこの課題が解決されることとなる。

ルネサスの柴田英利代表取締役社長兼CEOは、今回のウエハ供給契約によってSiCウエハの安定供給を受けることで、同社のパワー半導体の供給力が強化され、顧客の広範なアプリケーションに対応可能になると期待している。また、WolfspeedのGregg Lowe President兼CEOは、「シリコンからSiCへの世界的な転換を主導する上で、ルネサスのような業界トップクラスのパワー半導体メーカーに製品を供給することは非常に大きな意義がある」とし、今回の供給契約は、世界の省電力化を牽引するというミッションにおいて大きな一歩となる」と述べている。

なお、Wolfspeedは、ルネサスからの預託金20億ドルについて、JP工場の建設を始めとする、同社の設備投資計画に使用する計画である。同工場は複数のフェーズに分けられて建設が進められ、完成すると最先端かつ世界最大のSiC素材工場となる予定である。第1フェーズは2024年に竣工となる見込みである。