今回G7サミットの前に来日した世界の主要半導体関連企業の重役達だが、中でも米国企業が日本の大学に対して積極的に支援を行う事例が目立っている。

まず、2023年5月18日に、米Intelは、理化学研究所(以下理研)と、AI、ハイパフォーマンス・コンピューティング、量子コンピュータ等次世代コンピューティング分野における共同研究を加速させる連携・強力に関する覚書を締結した。理研は、Intel Foundry Services(IFS)社と連携することで、今後研究開発に必要なチップをIFSで製造し、スーパーコンピュータや量子コンピュータの性能向上に繋げていく狙いがあると見られる。

また、米 IBMも10万量子ビットを搭載した量子コンピュータの開発に向けて、東京大学、シカゴ大学と連携しながら、今後10年間にわたって新たなシステムの基礎となる技術の向上と、必要な構成要素の設計・構築を大規模に進めていくことで合意している。IBMは今後10年間で1億ドルもの金額を投資する。また、米 Googleもシカゴ大学と東京大学に対して、今後10年間で5,000万ドルを出資するという。

米Micronは、広島工場の地元である広島大学を始めとした日米の11大学や、東京エレクトロンとともに、日米両国のより強固で高度な技術を持つ半導体人材を育成するための日米大学パートナーシップに参画し、今後5年間で計6,000万ドル以上を投資し、年5,000人の学生がこのパートナーシップの恩恵を受けるという。Micronと広島大学は、2023年2月に、マイクロンやローツェと行った半導体関連企業十数社が参加する、「せとうち半導体共創コンソーシアム」を発足させ、4月には、活動拠点となる新たな研究施設を、広島大学ナノデバイス研究所内に完成させており、九州に次ぐ産学連携の半導体拠点としての期待が高まっている。

これらの動き以外でも、岸田首相と米国のバイデン大統領の首脳会談の中で、「グローバル・スタートアップ・キャンパス」と呼ばれる、AIを含む最先端技術の研究を行う大学を日本に誘致し、人材育成にあたるプロジェクトを東京都心に創設すべく、マサチューセッツ工科大学を渋谷区恵比寿に2028年に誘致するという検討が行われている。

今回のG7に跨いだ半導体産業の協力は、企業間での取り組みだけでなく、今後数十年安定して半導体、高性能コンピューティング事業を育成するため、日米両国の大学、研究機関に対しても支援を行う動きが目立っている。