米IBM Research社と東京エレクトロンは2022年7月20日、両社が共同で300mmウェーハを利用する新しいチップ積層技術を開発したことを発表した。
Si貫通電極(TSV)を利用して積層構造を形成する場合、各層のウエハを厚さ100μm未満にまで薄型化する必要がある。この薄型化ウエハは壊れやすく柔軟なため、生産プロセスで扱うためにはキャリア・ウエハというガラス基板と一時的に張り合わせる必要があった。プロセス終了後はウエハを紫外線レーザなどを利用してキャリアウエハから剥離するが、その際に薄型化ウェーハが破損してしまう危険性がある。
今回両社はSiに対して透過的な赤外線レーザを利用してキャリアからの剥離を可能にする技術を開発した。この技術によりキャリア・ウエハにガラス基板ではなくシリコン基板を使用することができるようになる。また、貼り合わされたシリコンウエハとなるため、製造装置の互換性やウエハ・チャッキングの問題が無くなり、加工中の欠陥を減らすことができる。さらに薄型ウエハのインライン・テストを可能にするといったメリットもある。
IBM Researchは、この新しいタイプのレーザ剥離を完全なものにするために、2018年から東京エレクトロンと連携していた。東京エレクトロンは、2018年以降、このプロセス・テクノロジを採用、300mmウエハによるシリコンウエハ・ペアを剥離および分離することができる新規の大量生産用製造装置の設計および製作を行ってきた。
両社は共同で、ニューヨーク州AlbanyのIBM Reserachの施設に製造装置システムの試作機を設置した。同施設で、試作機のさらなる検証を実施して、このプロセスが全体の半導体製造フローにどのように実装されるかを実証し、さらに、このプロセスを使用して構築された3Dチップ積層そのものの実証を行っていく。