2022年に入り、これまで半導体産業とは大きな縁がなかった国、インドの半導体産業への参入計画が騒がれるようになってきた。

ことの発端は、2021年12月15日に発表された、「電子産業(半導体及びディスプレイ)の誘致・育成を図る包括的な政策プログラム」である。総額7,600億ルピー(1兆 1,400 億円)と大きな予算を組んだ。

この中では、

・半導体及びディスプレイメーカーの工場新設に際し、投資コストの50%を上限に財政支援を行う。

・既存の半導体研究所の近代化・商業化を推進する。

・化合物半導体や半導体パッケージの工場など施設の新設に際して、投資コストの30%を上限に財政支援を行う。

・設計連動型優遇策(DLI)スキームとして、今後5年間にわたり、対象経費の50%を上限に、純売上高の4~6%を奨励金として供与する。今後5年間で年間売上高150億ルピー超の企業20社以上を支援する。

・半導体・ディスプレー産業の長期戦略を遂行するため、同分野の専門家の下で「インド半導体ミッション(ISM)」を結成し、持続可能なエコシステムの構築を図る。

この政策を発表した後、インドのベシナブIT大臣は、
「反応はとてもよい。ほぼ全ての世界の半導体大手から問い合わせが来ている」と主張した。実際に、インテル、GF、TSMCとも話し合いが持たれたという報道もあるが、現在の主要な参入者は、インドの鉱物資源大手であるベタンダ(Vedanta)社が、台湾の鴻海精密工業と設立した合弁企業や、半導体分野を強みとするシンガポールの投資会社であるIGSSベンチャー、アブダビの投資ファンドが率いるISMCが申請したとされる。

ISMCはコチャナハリの工業地域に、150エーカーもの土地を確保することを申請し、30億米ドルもの資金を投じ、65nmプロセスのアナログデバイス向け工場を建設すると見られる。また、べダンタ・鴻海精密連合は、約100億米ドルを投じて、早ければ2025年に半導体製造を開始すると見られている。インドでは、将来的に28~65nmの半導体を月産12万枚生産する計画で、136億ドルの投資が想定されている。また、それによってインド中央政府には56億ドルの支援が求められているという。

インドにおける半導体市場は、2026年には2020年比で4倍の630億ドルまで拡大すると見られており、長期的な需要が存在する。また、インドでも半導体不足が発端となり、自動車産業を始めとする産業に深刻な影響をもたらした。また、これまで世界の工場とも言われていた中国の動向が、米国との関係や、ロシアへの支援、ゼロコロナなどの極端な政策によって不安視されており、今後の投資先がインドに流れてくる可能性がある。

インドのモディ政権は、メーク・インディア構想を掲げており、インドに半導体産業を根付かせるには、今が好機とみており、積極的に支援を行う。