半導体製造世界最大手の台湾TSMCは、今後3年間でおよそ1,000億ドル(11兆円)もの大型投資を実施する計画を明らかにした。既に2021年の計画でTSMCは過去最大の280億ドルを投資することを発表していたが、半導体製造の需給バランスが崩れたことで、投資を増強することで更なる需要の増加に対応していくと見られる。
更に、TSMCは半導体需給逼迫解消のために製造コストが増加することを理由にこれまで顧客に実施していた値引きも21年末より実施しないという。

半導体設備投資の直近の動向では、インテルが200億ドルを投資してファウンドリ工場をアリゾナに建設、サムスンも今年280億ドルを投資すると見られているが、今回の投資増額や現時点での技術的優位性を考えると、インテルとサムスンがTSMCに追いつく事は難しいと考えられる。

その一方で、現在需要が逼迫している半導体が先端半導体だけでなく、「レガシィ半導体」と呼ばれる8インチウエハ向けなど、数世代前の製造装置を利用して製造するものも含まれていることから、技術力でトップを示さなくても、生産能力を増強することで、今後半導体の「スーパーサイクル」に突入したとき、各社が投資分を回収することは比較的容易になると考えられる。

また、台湾と中国の関係が決して良好ではなく、地政学的リスクをはらんでいる事も鑑みると、多くの米国半導体メーカーがTSMCに頼り切っている現状を緩和し、本当の意味での「地産地消」を実行できることはインテルにとっては強みであると言える。