GNC letter
GNCレター
ソニーは、近年スマートフォンの売上が大きく低迷している。 出荷台数を四半期別に見ていくと、ピーク時は2014年の1,190万台だったが、 2020年のQ1(1〜3月)では、新型コロナウイルスの影響があったとはいえ、わずか40万台とピーク時の約1/30まで落ち込んでしまった。これは、スマートフォン向けのイメージセンサーシェア世界第一位の企業としては実に寂しい結果である。 ここ3年ほどでアップル、ファーウエイをはじめとした各社が複数の焦点のレンズを搭載し、さらにToFセンサまで搭載したスマートフォンが標準となり、カメラ機能がより重要視されている為、カメラ機能に長があるソニーにとってはシェア挽回のチャンスとも言える。 一方、ソニーの第2四半期(4〜6月)の出荷台数は80万台と、新型コロナウイルスが日本を始め各国に広がった中、約2倍にまでシェアを回復している。 この回復に寄与したのが、ソニーという企業のブランドイメージを結集したフラッグシップモデル「Xperia 1 Ⅱ」であると見る。
我々がスマートフォンで行うことは何であろうか。 電車で出勤するのであれば、今では多くの人が音楽(インターネットラジオ)を聞いたり、Youtubeやamazon prime、Netflixで動画を視聴する。 もしくはゲームに熱中する人も多いだろう。 また、ランチで美味しいものを食べれば、そのプレートを写真で撮影し、SNSへ投稿したりする。若者は米中貿易摩擦は気にせずTiktokで動画を撮る。
販売台数が低迷したソニーは2019年より、スマートフォンの開発方針を大きく変更してきた。 ディスプレイをテレビに用いられる16:9から、映画用の21:9の縦長ディスプレイに変更し、クリエイター向けの色味をスマートフォンへ実装。 より動画視聴に没入してもらう意図が読み取れる。 更に、映画撮影を始めとしたプロフェッショナル向けムービーカメラのインターフェイスを落とし込んだアプリケーションをフラッグシップモデルXperia1/5に標準搭載した。
2020年に発売されたXperia 1Ⅱ/5Ⅱでは、更に静止画のインターフェイスもフラッグシップ一眼レフαシリーズに極めて近い「Professional Photo」 を採用し、秒間20コマの高速撮影を達成、さらにソニーのコンパクトデジタルカメラや1眼レフで関係の深い独Zeiss製のレンズを搭載した。
ゲーム機能においては、Playstation4のゲームをスマートフォン内で遊べるリモートプレイを搭載し、スマートフォンの画面をコントローラーに装着することで Playstation4のゲームを外でも専用コントローラでプレイ可能に。さらには攻略情報の検索、ベストプレイ動画の録画を可能にした「ゲームエンハンサー」機能を搭載。
音楽再生では、ハイレゾ(Hi-Resolusion Audio)対応をスピーカーやヘッドホンから積極的に採用し、最新のXperiaではついにAmazon music等の ストリーミングでも再生できるようになった。
スマートフォンで頻繁に使用される各機能を、ソニーは最高性能で応えることを目指し、それはXperia1Ⅱ、Xperia5Ⅱでほとんど達成されたと言っていい。
しかし、かつてのライバルであったアップルとのシェアの差は大きい。2019年 これはやはりアップルがOSを自前で作っていることがこの差を生んでいる。 写真撮影機能1つとっても、モードを選んでシャッターを切れば、iphone12は良い写真にしてくれる。 これは廉価版から最上級モデルまで統一されている。 Xperia1Ⅱのように露出補正をかけて、Isoを選ぶようなことはしなくても良い。
iOS(iphone)の、すべてが連携、調和した操作は、全てに最高の機能を持たなくても、 老若男女問わずにスマートフォンの各機能を誰でも安定して引き出せる強みとして、市場を席巻した。 一方、ソニーのこだわり抜いたフラッグシップ技術をしっかりと引き出せる消費者は決して多くはないだろう。 また、価格に至ってもハイエンドモデルのXperia1ⅡとXperia5Ⅱは iphone最上位のpro/pro max並である。 それなりの高機能を安く提供できるようになったOppoやXiaomiなどの中国メーカーと価格では勝負できない。
ソニーはこの2年でライバルには無いスマートフォンの魅力を培った。この利点は大容量、高速通信化する今後へ活きてくるだろう。 一方、今後はソニーが各分野で培い、スマホへ搭載した高機能を、各ユーザーへ優しい操作方法で届けていくことが、シェア復活の鍵になるのでは無いかと感じた。
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