半導体メモリ大手、キオクシアホールディングスが8月23日、東京証券取引所に上場の申請をしたことが明らかになった。10月中の上場を想定している。時価総額は1兆5,000億円超を目指す。 

 同社は東芝の半導体事業が2018年の経営再編に伴い、米の投資ファンド、ベインキャピタルなどに買収されたことで独立し成立。同社は2020年にも上場を目指し、東証に上場を承認されたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延と米中貿易摩擦の激化により市況の先行きが不透明だとして直前で延期した。その後、メモリ首位の韓サムスン電子に対抗するため、米Western Digital(WD)のメモリ事業との経営統合を進めたものの、中国の規制当局の承認を得られず、2023年10月に交渉が打ち切られていた。 

 今回キオクシアが再び上場を目指すのは、半導体市況が好転したためである。スマートフォンやパソコンの需要が底を打ったほか、生成AIデータセンター向けの需要も拡大しており、同社の2024年4~6月期の売上高は4,285億円、純利益は698億円と同期間としてはともに過去最高となった。業績の不振が続いていた同社はこれまで資金調達を借り入れに頼っていたが、業績が回復したことで調達手段を増やし、海外メーカーから遅れをとる生産拡大に向けた設備投資を積極的に進めたい構えだ。 

 一方で懸念点も存在する。現状の市場動向から同社は明るい見通しを示しているが、足元の業績回復ペースが鈍れば、上場時の時価総額は2020年の公募・売り出し価格の仮条件から算出した約1兆5,000億~1兆8,800億円を下回る可能性もある。また、韓サムスン電子や韓SK Hynixから大きく後れを取っている現状を鑑みると、単独での生き残りは難しいという見方もある。加えて、SK Hynixは同社の株式を保有しており、上場後も15%の株式を取得する。キオクシアとWDの経営統合交渉の際、SK Hynixは最後まで承認しなかったということもあり、経営戦略を巡り、摩擦が起こる可能性もある。