三菱電機は5月29日、重点成長領域と位置付けるパワー半導体の2025年度の売上高目標を2,600億円以上に引き上げた。従来の目標は2,400億円であったが、2023年度にこれを前倒しで達成しており、2025年度は更なる成長を目指していく。

電気自動車(EV)の急速な普及や脱炭素化の推進を背景に、パワーデバイスの需要は急増している。売上高に加え、営業利益率についても2025年度目標だった10%を2023年度に既に達成している。

今後は産業分野と電鉄分野をベースにして、自動車分野とエネルギー分野、民生分野を成長領域に位置付け、製品開発、生産、売り上げの強化を図る。同社は2023年に約2,600億円規模の生産体制強化策を発表しており、パワーデバイスの中でも、特にSiCパワーモジュールがEVへの搭載などにより、市場を急拡大させると見込み、同製品を核とした成長基板の強化に取り組むとしている。既に熊本県泗水地区に8インチSiC製品に対応した新棟を建設中であり、2025年9月に竣工を前倒し、2025年11月の稼働開始を決定したほか、米Coherentとの垂直連携によるSiC基板の安定調達、蘭Nexperiaとのアライアンス強化によるSiCディスクリートの販路拡大を発表している。

また、Siについては、福山工場での300mm生産ラインの整備を推進し、モジュールの戦略製品として、自動車向けJ3シリーズを投入する。同製品は従来品に比べ、約40%の小型化が可能であり、xEVの航続距離の延伸と、設計の容易化も実現できる。なお同製品はSiCでも投入予定とのこと。

三菱電機の上席執行委員、半導体・デバイス事業本部長の竹見政義氏は、「高い性能と品質を実現する設計技術と、製造技術の複雑な擦り合わせノウハウが強みであり、SiおよびSiCともにパワーモジュールの豊富な市場実績と強固な顧客基盤を構築している。これらの強みを生かして、高品質で競争力の高い製品を提供する」としたうえで、「今後も技術トレンドをリードする革新的な光デバイスを他社に先駆けて市場投入することで、現在のポジションをさらに強固にしていく」と自信を示した。

出典:三菱電機 IR DAY 2024 半導体・デバイス事業