韓国・SKグループの系列会社でAI半導体設計を専門に扱うSAPEONは11月16日、データセンター用AI半導体の新製品「X330」を発表した。AI推論に特化したNPU(Neural network Processing Unit)で、処理速度が同社既製品(X220)と比べて4倍向上した。

同社は2016年にSKグループの内部プロジェクトとして発足し、2020年に韓国で初めてデータセンター用AI半導体を発表した。その後、法人登録され、現在ではSKテレコム、SKハイニックス、SKスクウェアの共同出資を受けている。

新製品はSKハイニックスのグラフィックDRAM「GDDR6」が搭載され、台湾・TSMCの7nm工程で生産される。既製品である「X220」に比べて応用範囲が拡大するとともに、4倍以上の演算性能と2倍以上の電力効率を誇る。また、競合する米・NVIDIAの「L40S」GPUと比べても約2倍の演算性能となっている。同社代表のリュ・スジョン氏は「生成型AIの核心技術であるLLMサポートなど、これまで難しかったすべてのものを具現化するためにチップを完全に新しく開発した」とし、「LLM以外にも様々なAI応用サポートを計画しており、開発費を含めた費用対比性能を考慮し、最も効率的な部品を選択した」と述べた。新製品はテストと信頼性検証を経て、来年の上半期から量産を開始する予定である。

既存の「X220」の長所をさらに伸ばした「X330」により、同社はAIサービスモデル開発企業やデータセンターの攻略に拍車をかける戦略である。様々な産業分野でAI半導体の活用度を高め、高度のAI技術を安い価格で利用できるようにすることで、誰でも先端技術に触れられる社会をつくることを目指すとしている。同社は今後、自動運転車用IP、防犯カメラ等の高性能エッジデバイス用AI NPUを発表する計画であり、HBMが搭載された次世代AIチップ「X430」も2025年末の発売を目指している。

AI半導体はこれまでNVIDIAの1強であったが、SAPEONをはじめ、NVIDIAの牙城を崩そうと、競争が活発化している。今後も各社の動向に目が離せない。