豊田通商は、関西学院大学や、株式会社山梨技術工房と共に、SiC(炭化ケイ素)ウエハの製造プロセスで生じる結晶の歪み(加工歪み層)を検査する技術を共同で開発した。この技術は、関西学院大学と豊田通商が2017年から共同で進めている高品質SiCウエハの量産プロセス技術開発の中で得られた革新的検査技術であるとされ、半導体を製造・研究する現場が抱える課題解決及び製造の効率化に寄与するものと見ている。

背景として、SiCウエハの製造時の課題として、硬くて脆い材質のため、スライス、研削・研磨の際、表面近傍で結晶が破壊され加工歪み層が生ずる。加工歪み層は、ウエハの良品率低下やパワー半導体の不具合の原因となる一方、ウエハー全面を可視化する技術が存在せず、ウエハー量産加工プロセスの品質管理や受入検査にも適用可能な「高速・高精度加工歪み検査技術」が強く望まれてきた。

関西学院大学(工学部 金子忠昭教授)と豊田通商は、山梨技術工房の持つレーザー散乱光応用技術に着目し、三者共同でSiCウエハーの機械加工由来の歪み層を全面にわたり可視化し、ウエハーの歪み層を相対的に比較する技術を開発した。(下図)

 

この技術は、レーザー光をウエハ表面に照射し、表面及び内部からの散乱光を最適な角度で検出することで、加工歪み層を可視化することが可能という。さらに、ウエハ全面を高速で検査することができ、量産加工プロセスの品質管理等へも適用が可能となり、今後、この技術を実装したウエハ検査装置の製品化の早期実現を目指すとしている。

なお、この検査技術を通じて確認された加工歪み層は、関西学院大学と豊田通商が2021年3月に公表した、熱エッチングと結晶成長を統合した非接触型のナノ制御プロセス技術「Dynamic AGE-ing®」により、完全に除去することが可能とされる。

この共同開発技術は、2022年9月11日から16日までスイスで開催される「ICSCRM2022(SiC及び関連材料に関する国際会議2022)」においても、発表ならびにブース展示を行う。

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