関西学院大学 (理工学部 金子忠昭教授)と豊田通商は、SiC基板の欠陥{結晶の転位の一種である基底面転位(Basal Plane Dislocation―BPD)}を無害化する表面ナノ制御プロセス技術「Dynamic AGE-ing」を開発した。

このDynamic AGE-ing技術は、従来の機械研磨やCMPとは異なり、熱エッチングと結晶成長を統合した非接触型のナノ制御プロセス技術とされる。SiC基板を超高温下の気相環境に配置することで、表面の原子配列を自律的に整える事によって、加工歪み層の完全除去に加え、BPDの伝播遮断による無害化を実現するとしている。

このDynamic AGE-ing技術を適用することで、メーカー、サイズに拘らずにSiC基板を高品質化でき、これによる工程の簡略化や歩留まりの改善によって、SiC基板のコスト競争力向上にもつながる。

今後は、関西学院大学、豊田通商双方で、同技術を適用したSiC基板のサンプル供給を2021年度より開始し、デバイスメーカーと協同で実用化に向けた評価検証を進めていくとしている。

更に、自動車分野を中心とした幅広いユーザー企業へ同技術を適用した6インチ基板を供給するために、ビジネスパートナーを広く募り量産化を早期に実現したいとしている。
更に、8インチ基板へもDynamic AGE-ingを適用した開発を進めていくとしている。

豊田通商は、トヨタ自動車の関連会社の一つであり、トヨタ自動車は昨年発売した、燃料電池自動車のMIRAIに、トヨタ自動車関連会社のデンソーが開発・生産するSiCパワー半導体を利用した昇圧用パワーモジュールを搭載している。
このように、量産化及び、コスト削減に向けて開発を実施しやすい環境にあると見られ、今後の展開が期待される。