独半導体大手、Infineon Technologiesは8月9日、マレーシアのケダ州クリムに建設している「クリム第3工場」フェーズ1が完成し、稼働を開始したと発表した。同工場は2022年6月より建設が進められ、2024年4月から装置搬入などが進められていた。20億ユーロ(約3,200億円)を投じて建設した同工場では、SiCパワー半導体の製造に重点を置く。

SiC半導体は通常のSiに比べ、電気をより効率的にスイッチングし、より小型の設計が可能である。同工場で製造される8インチSiCウエーハによるパワー半導体は主に電気自動車(EV)、EV用の急速充電ステーション、鉄道、洋上風力発電などの再生可能エネルギーシステム、AIデータセンターなどに用いられる見通しである。また、SiCパワー半導体に加え、GaNのエピタキシャルプロセスも実施されるとしている。2024年後半よりウエーハの出荷が開始される予定である。なお、フェーズ1では900人の高付加価値雇用が創出される。

同工場のフェーズ2についても建設が進められている。フェーズ2の投資額は50億ユーロで2027年の完成を目指す。フェーズ2まで完成すると、世界最大規模の8インチSiCパワー半導体工場となる。

8月8日に開催された開設式では、同社CEOのヨッヘン・ハネベック氏をはじめ、マレーシアのアンワル首相やケダ州のサヌシ首相などが出席した。ハネベックCEOは「第3工場はInfineonのWBG(ワイドバンドギャップ)半導体ビジネスにおいてハイライトになる」と強調したうえ、「新工場で製造される次世代パワーデバイスは、さまざまな市場のさらなる発展に大きく貢献するだろう」と自信を覗かせた。

また、アンワル首相は、「マレーシアでは過去数十年にわたり半導体の拠点が建設されてきたが、これらはほとんどが後工程工場だった。Infineonの第3工場は前工程工場であり、これは重要なポイントになる。マレーシアは半導体産業において、また一段、高みに上ることができるだろう」と述べた。