サムスン電子が、2020年10月8日に発表した7-9月の決算では、売上が6.5%増の66兆ウォンに達したことが発表され、新型コロナウイルスによる消費者向けデバイスの売上回復や、ファーウェイの苦境を受けてのシェア拡大が果たされているが、2019年8月に発表された日韓半導体材料輸出規制が尾を引いて日本の一部材料メーカーはその恩恵を受けられていない。

特にフッ化水素においては、日本のメーカーとしてトップシェアを誇る、ステラケミファと森田化学工業が共に打撃を受けている。
ステラケミファでは、韓国で製造される半導体ディスプレイ向けの輸出販売が輸出規制のあおりを受けて低迷し、4-6月期の売上高は19年同期では97億3,300万円だったものが、20年度では、82億2,200万円と、約15.5%の落ち込みを見せている。一方の森田化学工業の方はより深刻で、2019年7月〜2020年6月の純利益が前年度比90.2%減の7,867万円と大幅に落ち込んだ。

一方、韓国ではフッ化水素の国産化が輸出規制以降順調に進み、メモリ大手SKハイニックスと同じSKグループである、SKマテリアルズが純度で9が5個並ぶ「5ナイン」の量産化を進めており、半導体の洗浄と比較して厳格ではないディスプレイの洗浄を中心に、国産の代替化が進められ、日本メーカーはその結果売上を大きく減らしていると見られる。

フッ化水素と並び、韓国企業が打撃を受けると見られていたEUVレジストにおいては、東京応化工業は韓国にEUV向けレジストの工場を建設し、現地で生産をしている。
JSRは子会社を通じてベルギーから韓国へ輸出することによって、問題なくEUVレジストを輸出することができた。更にJSRも韓国向けにレジストを現地生産することを検討している。

そして、EUVレジストはフッ化水素とは異なり、技術的なハードルが高いことで、韓国内で代替品の生産に成功したという情報はまだ無い。
日本の半導体メーカーが撤退して以降も、日本は材料、製造装置の技術力を高め、これらを世界中に輸出してきたことにより、未だに半導体産業へ高い影響力を持つ。今回のように国の規制がきっかけで高い技術力を持つ企業が苦境に陥るということは、今後、人材流出や企業の買収などで培ってきた技術そのものが海外へ流出して、更にダメージを受けることが懸念される。