米国半導体工業会(SIA)は2020年9月16日、Boston Cosulting Group(BCG)との米国内での半導体製造装置事業に関する合同調査「Government Incentives and U.S. Competitiveness in Semiconductor Manufacturing」の成果を発表した。同調査では、米国政府から米国の半導体業界に対して500億米ドルの支援(税制優遇を含む)があれば、今後10年間で米国内に19の半導体工場が建設新設され、7万人以上におよぶ高給の仕事(high-paying jobs)が創出されるだろうとしている。このため、米国議会に対して米国内の半導体の製造、研究開発に対して継続的な支援を行うことを提言している。
世界の半導体製造能力は今後10年間で56%の拡大が期待でき、政府の支援があれば米国は増加分の25%程度を占めることが可能だとしている。しかし、支援がない場合は6%程度にとどまると指摘している。
SIAへの参加企業は売上高ベースで米国企業の95%を占めるだけでなく、米国以外の半導体企業に関しても3分の2以上が参加している。
SIAのKeith Jackson会長(ON Semiconductor CEO)は「米国の半導体製造のシェアは1990年の37%から2019年には13%にまで低減しているが、今後10年間に政府による野心的な投資が継続されれば、米国は半導体製造に関して世界で最も魅力的な場所となるだろう」としている。
米国の半導体製造業復活に関しては、2020年6月に超党派の議員達が米国議会に対して半導体製造を強化する法案「Creating Helpfur Incentives to Produce Semiconductors for America Act(CHIPS for America Act)」を提出している。同法案は半導体製造に関する投資税額控除を核とするもので、これにより米国の半導体製造、装置などの設備への投資を行いやすくする。そこには、2024年まで有効な40%の投資税額控除が含まれている。なお控除は2027年に段階的に廃止されるとしている。
また、減税などとは別に、米国防総省が既に実施しているエレクトロニクスの「復活」に向けた取り組み「Electronics Resurgece Initiative(ERI)」に少なくとも120億米ドルを投入する。さらに半導体の研究開発に向けて50億米ドルの投資を提言している。この資金は、ICパッケージング、組立の研究機関に提供していく。また、米国のマイクロエレクトロニクスのパッケージングエコシステムの強化のために5億米ドルの投資ファンドの創設も検討されている。