住友電気工業は7月7日、東京大学の前田拓也講師らの研究グループとの共同研究を通じて、窒化ガリウムトランジスタ(GaN-HEMT)の次世代バリア層材料として期待されている窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN)と窒化ガリウム(GaN)のヘテロ接合における二次元電子ガスの散乱機構を解明したと発表した。

現在普及している高周波用GaN-HEMTの構造では、炭化ケイ素(SiC)基板上にGaN結晶を成長させ、その上に窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を成長させ、ヘテロ接合を形成することで、界面に高移動度な二次元電子ガス(2DEG)を形成する。

近年、次世代高周波通信技術の発展に伴い、より高周波、高出力のGaN-HEMTの開発に向け、バリア層材料におけるAlGaNに替わる素材として、バンドギャップが大きく、高い自発分極、圧電係数、強誘電性などを有するScAlNへの注目が集まっている。一方で、ScAlNとGaNのヘテロ接合では、電子が高密度に集まるものの移動度が低いことが問題点であり、その移動度を制限する要因については未解明であった。

共同研究では、分子線エピタキシー(MBE)を用いてScAlNとGaNの高品質なヘテロ接合を成長させ、そのヘテロ界面に誘起される2DEGの散乱機構が界面ラフネス散乱(半導体デバイスの酸化膜/半導体界面やヘテロ接合界面において凹凸がキャリアの輸送を阻害して移動度を低下させる機構)であることが明らかになった。

住友電工は「今後は、界面ラフネスを改善し、高密度・高移動度の二次元電子ガスの形成を実現することで、次世代高周波通信に用いられるGaN-HEMTの性能向上に貢献し、当社製GaN-HMETへの適用も実現したい」としている。

出典:住友電気工業 プレスリリース