トランプ米大統領は2025年4月2日、米国への全ての国からの輸入品に関して、「相互関税」を課すことを正式に発表した。5日からは10%の一律関税を、9日からは貿易障壁に応じて国・地域別の追加関税をかける。日本には合計で24%の相互関税が課されることが決まっており、製造業各社への影響が懸念されている。

半導体産業では、半導体そのものについては米国外で製造していることがほとんどであるために適用外となったが、間接的な影響は大きいとみられる。日本から米国向けの輸出のシェアが一番多いのは自動車であるが、これにはECUやパワー半導体、センサーが搭載されており、日本ではルネサスエレクトロニクスやロームなどがこれを製造しており、間接的な影響は避けられないだろう。

加えて、米Appleは現在、iPhoneや周辺機器を台湾電機大手の鴻海精密工業を中心に製造委託しており、中国やインドで組み立てた製品を世界各地に出荷している。中国からの輸入では54%、インドからでは26%の関税が適用されるため、米国内での価格の急騰が懸念されている。また、AIデータセンターに搭載するサーバーは電源や冷却システムなど、複数の部品で構成されるが、これらは主にアジアでの組み立てが必要となっており、高い関税が適用される。そのため、直接的な関税はかけられないものの、AIに欠かせない画像処理半導体(GPU)を手掛ける米NVIDIAに対しても打撃となる可能性がある。

こうした企業の半導体を受託生産しているのは台TSMCであるが、先端半導体の製造に必要となる製造装置及び材料の一部は日本のメーカーが供給している。つまり、半導体製造装置メーカー及び材料メーカー各社はAppleのような最終製品を販売する企業が関税の影響を受け、価格競争力が低下し、販売不振に陥った場合、半導体メーカーは生産能力が過剰となり、設備投資金額が減少する可能性があり、間接的に相互関税の影響を受けることになる。

関税政策は、輸入品の価格を上げることで米国製品の売上を増やしたり、生産を米国内に戻し、雇用を増やしたりするなどの狙いがある。しかし、米テック大手各社はその製造の多くをアジア諸国に頼っているため、自国企業であるにも関わらず、関税の影響を大きく受けることになり、顧客からの需要の減少が懸念され、これが日本を含む世界各国の関連企業への間接的な影響にもつながるとみられる。

現状、半導体業界に関税がもたらす影響は間接的なものであるため、影響を正確に把握するのは難しい。更に、トランプ大統領は3日、半導体に対する措置についてもまもなく取られる可能性があると述べており、先行きは不透明である。