米Microsoftは2月19日、「トポロジカル量子ビット」を世界で初めて搭載した量子プロセッサ「Majorana1」の開発に成功したと発表した。従来のシリコンベースのチップに比べエラーの訂正の必要性が少なく、安定性が高まることが期待される。

量子コンピュータは量子力学という理論を応用した新しい原理で動く計算機。従来のコンピューターが0または1の値をとるビットを用いるのに対し、量子コンピューターは0と1を重ね合わせた「量子ビット」を用いて超並列性を実現できる。最先端のスーパーコンピュータをしのぐ計算能力が期待されており、米中を中心に各国の企業・研究機関による開発競争が激化している。実際、米Googleは2024年12月に「Willow」という105量子ビットを搭載した新しい量子チップを発表し、10の25乗年かかっていた計算を5分未満で実行したとしていた。

一方で、量子ビットは非常にデリケートで、外部からのわずかなノイズによってエラーが発生しやすいという、安定性の課題があった。

Microsoftが今回発表した「Majorana1」はこの課題を克服するため、従来の「超電導方式」と異なり、世界初のトポロジカルコアアーキテクチャを採用した「トポロジカル量子ビット」を搭載した量子プロセッサである。この方式では同社が開発した「トポコンダクター」という特殊な素材を用い、量子情報を従来の固体、液体、気体とは異なる、全く新しい状態の物質である「トポロジカル状態」にして格納することにより、外部ノイズの影響を受けにくくでき、安定性を高めることができる。

現在の「Majorana1」は8量子ビットの実装に留まっている。しかし、同社によれば、現状の手のひらサイズのチップで量子コンピューターの実用化の目処となる100万量子ビットまでスケールアップが可能であるという。

同社は今後、同プロセッサーを組み込んだ誤り耐性のある量子コンピューターの試作品を数年で構築する予定である。なお、この研究成果は同日、科学誌「Nature」に掲載された。