米国大統領選が現地時間11月5日に投開票を迎える。民主党指名候補のカマラ・ハリス氏と共和党指名候補のドナルド・トランプ氏の一騎討ちの構図となっているが、それぞれの陣営における半導体政策にはどのような違いがあるのだろうか。

両陣営で共通しているとされるのは、中国に対する強硬姿勢である。ハリス氏はバイデン政権で副大統領を務めており、基本的な路線はバイデン大統領を継承する。バイデン政権は2022年10月以降、スーパーコンピューターや人工知能(AI)に使う先端半導体やその製造に必要な装置、材料等の中国への輸出を事実上禁止し、対象を徐々に拡大している。また、米国内の半導体産業を活性化し、半導体の国内調達を可能にするため、2022年8月にCHIPS法を制定し、新たに工場を作る企業に積極的な支援をしている。この支援策の対象には台湾・TSMCや韓国・サムスン電子をはじめとした国外企業も含まれる。ハリス氏が当選した場合、CHIPS法による支援は今まで通り継続され、今後は非先端分野の半導体および装置・材料に関する対中輸出規制もさらに強化されることが予想されている。

一方のトランプ氏も対中規制の強化という方向性は変わらない。ただし、トランプ氏が当選した場合、インパクトを出す上でも急に一段と強い規制が出されることも考えられるため、東京エレクトロンや蘭・ASMLなど、関連企業には大きな打撃となる可能性がある。また、国内半導体産業の強化という姿勢もハリス氏と大きくは変わらないが、トランプ氏は「高額の輸入税を課せば製造業が国外から米国に工場を移転せざるを得なくなる」と主張する。

また、CHIPS法について、「不利な取引」であるとして批判しており、高関税の適用と同時に同法による助成も打ち切られる可能性が考えられる。特に台湾を巡っては、「彼らは我々に保護を求めているのに、その保護の対価を払おうとしていない」とし、「我々の半導体ビジネスを盗んだ」と主張しており、厳しい税率が適用される可能性がある。なお、最先端半導体の量産を目指すRapidusの設立については台湾有事を念頭に、同盟国の日本に先端半導体の生産能力を築きたいという米国の意向もあったとされている。トランプ氏により高関税が適用されるようなことになれば、同社にとっても大きな打撃となる。

両陣営とも「対中強硬姿勢」と「国内半導体産業強化」という点では考えが一致しているものの、具体的な政策面では異なる部分がある。トランプ氏が当選した場合、半導体関連企業への大きな影響が懸念され、各社は対応を強いられるとみられる。