バイデン米政権は東京エレクトロンや蘭・ASMLなどが先端半導体技術へのアクセスを中国に提供し続けた場合、最も厳しい対中貿易制限を課すこと検討していると同盟国に伝えたことが7月16日、わかった。

米政府は外国直接産品ルール(FDPR)という措置の活用を検討している。同措置は、外国製のものも含め、米国技術が使用されている製品について、製品販売を米政府が差し止めるというものである。東京エレクトロンやASMLは輸出規制に該当しないグレードの装置を中国に引き続き販売し、大きな収益を得ており、実際にFDPRが講じられれば、両社にとっては非常に大きな打撃となる。また、2023年に日本・オランダが中国向けの先端装置輸出規制を強化する直前に中国が買いだめした製造装置について、保守や点検サービスの提供も規制するように日蘭両国に要求している。

商務省のアラン・エステベス次官は「適切な設備さえあれば、中国はAI向けの高性能半導体をつくることができる」と述べ、日蘭の高性能な半導体製造装置を使い続ける事が技術の進歩につながるとして懸念を示した。

こうした動きを受けて、半導体関連株価は大幅に下落した。7月17日の東京株式市場で東京エレクトロンの株価は7.5%下落、レーザーテックやSCREENホールディングスなどの関連銘柄も売りが広がった。また、アムステルダム市場では、ASMLが一時11%安まで下落し、売買が停止された。

なお、FDPRの検討に加え、ドナルド・トランプ氏のブルームバーグ・ビジネスウィークにおけるインタビューでの発言も株価下落の一因とみられている。トランプ氏は、中国が台湾を攻撃した場合、「(台湾は)米国に防衛費を支払うべきだ」とし、米国の関与について懐疑的な姿勢を表明。現在、TSMCが台湾で運営する最先端半導体工場は世界の半導体サプライチェーンに必要不可欠なものとなっており、11月に米大統領選を控えるトランプ氏の発言は投資家心理に大きな不安を与えたものとみられる。

複数要因が重なり、半導体市場の先行きが不透明になりつつある。今後の動向を注視したい。