バイデン米政権は8月16日、米半導体大手Texas Instruments(TI)がCHIPS法に基づき、16億ドルの補助金と30億ドルの融資を受けることを発表した。

TIはアナログ及び組み込み処理半導体の世界的大手。電源管理集積回路、マイクロコントローラ、アンプ、センサー等、様々な分野で用いられる成熟ノード、旧世代半導体を専門としている。同社は2029年までに総額およそ180億ドルを投じ、300mmウエーハの工場をユタ州レヒに1つ、テキサス州シャーマンに2つを建設する計画で、今回の補助金・融資金はここに投入される。工場が完成すると、ユタ州レヒでは28nm~65nmのチップを1日当たり数千万個、テキサス州シャーマンでは65nm~130nmのチップを1日当たり1億個生産可能となる見込みである。また、製造業で2,000人、建設業で数千人を雇用する計画である。

TIの社長兼CEOであるHaviv Ilan氏は、「米国での 300mm 製造事業の拡大に伴い、当社の投資により製造と技術における競争上の優位性がさらに強化される」としたうえで、「2030 年までに社内製造を 95% 以上に拡大する計画で、当社は地政学的に信頼できる 300mm 製造能力を大規模に構築し、今後何年にもわたってお客様が必要とするアナログ及び組み込み処理チップを提供していく」と述べた。

CHIPS法による補助金、融資金の大半は、台TSMCや米Intelなどの手掛ける最先端半導体の国内での生産を支援するものであるが、新型コロナウイルス禍において旧世代半導体が不足し、米国内のサプライチェーンの混乱が発生したことを背景に、旧世代半導体の製造に対しても最低20億ドルを確保するよう定められている。

Gina Raimondo米商務長官は「パンデミックの間、現行世代および成熟ノードのチップの不足がインフレを加速させ、我が国の安全性を低下させた」とし、「米国経済のあらゆる分野で使用されているこれらの基礎的な半導体のサプライチェーンを確保する」と、投資の狙いを述べた。