経済産業省は、2021年3月23日、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」内の「研究開発項目②先端半導体製造技術の開発(助成)」実施者の公募を行い、実施体制が決定した。

今回採択された事業は、先端半導体製造プロセスのうち、前工程に係る製造技術(微細化(More Moore)技術)の開発を実施するというもの。

具体的には、ポスト5G以降の情報通信システムで用いられる先端半導体を国内で製造できる技術を確保するため、先端半導体の製造技術の開発に取り組む。
パイロットライン(一部の製造工程から成るリサーチライン、ウエハを国内で相互に移送することにより一繋ぎのラインとして機能するものも含む。)の構築等を通じ、国内に無い先端半導体及びその周辺デバイスの製造技術(ロジック半導体と組み合わせて動作するメモリや光デバイス等に関する技術、ロジック半導体を含む複数の半導体の実装技術等を含む)を開発する。

テーマ名は、「先端半導体の前工程技術(More Moore技術)の開発」となり、研究の概要は、
「先端半導体はさらなる微細化が進展し、IEEEのIRDS2020によると、プロセスノードは2022年に3nmノード、2025年に2.1nm、さらにその先では2028年、2031年、2034年に1.5nm、1.0nm、0.7nmに進むことが予想されている。そして、微細化の進展に伴い、トランジスタ構造はFinFETからナノシートを活用した三次元構造やGAA(Gate All Around)構造へと変化、チャネル材料はSiGeやGe、二次元材料が多用されるようになり、配線材料もCuからReに変化する等、新構造と新材料を用いたトランジスタへと変化していく。このため、半導体製造・プロセス技術全般について新規技術開発や抜本的な性能向上が必要となる。
そこで、2nm以降のプロセスノードの先端半導体において求められる高性能な露光・微細加工技術、成膜技術、アニール技術、エッチング技術、洗浄技術のうち、特に新規開発や大幅な性能向上が必要となる製造・プロセス技術等(以下の開発対象技術全てを含める必要は無い。)を開発するとともに、パイロットラインの構築等を通じて、微細加工を施した実ウエハによる製造装置の評価・検証を実施し、国内に無い先端性を持つロジック半導体の製造技術を確立する。

研究の開発対象は以下の通り
・露光・微細加工技術(微細な三次元構造の加工・形成技術等)
・成膜技術(新材料チャネル、新材料配線、極薄膜/多層積層技術等)
・配線技術(微細孔への埋め込み、裏面配線等)
・アニール技術(極薄膜対応技術、低熱履歴化技術等)
・エッチング技術(新材料、新構造のエッチング技術等)
・洗浄技術(微粒子/メタル濃度の極低濃度化等)
・革新的な高生産性プロセス技術
・先端半導体と一体として機能するメモリ(キャッシュ用途等)の製造技術
・その他の重要な製造・プロセス技術

この研究の開発を実施する企業として、露光装置大手のキヤノン、国内半導体製造装置最大手の東京エレクトロン、洗浄装置大手のSCREENセミコンダクタソリューションズ、産業技術総合研究所が選定された。

また、この研究は技術の将来的ユーザーとなるファウンドリ企業やデバイスメーカーとの連携を積極的に構築するとしており、TSMCやインテルも協力するとしている

研究期間は5年の予定。経済産業省は本研究に420億円の支援を予定しているという。

また、翌日には経済産業省は半導体やデジタル産業の政策の方向性を議論する検討会の初会合を開いた。初回は半導体について議論し、5G通信インフラや自動走行など半導体の需要を喚起するとともに、半導体の国内製造基盤を強化する方向性を打ち出した。5月頃に取りまとめ、政府の成長戦略にも反映させたい考え。
本会合では、国内の半導体産業の現状に対して大きな危機感が共有され、先端半導体製造技術の共同開発とチップを生産するファウンドリの国内立地や、デジタル投資の促進と先端ロジック半導体の設計開発を並行して取り組むことで、ロジック半導体の需要喚起とロジック半導体の設計・開発を強化することを両輪で進めることの必要性が指摘された。