ソフトバンクグループは7月12日、人工知能(AI)向け半導体スタートアップの英Graphcoreを買収したと発表した。買収額は明らかにされていない。ソフトバンクグループの孫正義会長は人類の1万倍賢い「人工超知能」(ASI)の実現を目指しており、その戦略の一環であるとみられる。

GraphcoreはAI向けプロセッサー「インテリジェンス・プロセッシング・ユニット」(IPU)の開発を手掛ける。産学連携プログラムにより米スタンフォード大学や英オックスフォード大学などとも提携している。日本でも近畿大学情報学部脳計算科学研究室が2022年に、脳の仕組みに基づいたディープラーニング(深層学習)の新たな学習アルゴリズム(計算手順)開発で同社のIPUを選定している。

GraphcoreはAI半導体大手、米NVIDIAと肩を並べる存在になると一時期待されており、2020年末時点での評価額は27億7,000万ドルとなっていた。ところが同社は顧客獲得に苦戦し、2022年の売上高は270万ドル、損益は2億460万ドルの赤字となり、存続にはさらに資金が必要であると開示した。同社は従業員数を5分の1削減し、ノルウェー、日本、韓国、さらにはナイジェル・トゥーンCEOが有望な市場としていた中国からも撤退した。

トゥーンCEOは11日の記者会見で、「ソフトバンクグループとの取引により世界レベルで競争するために必要なリソースを得られる」と述べた。また、引き続き現在の経営陣の下でソフトバンクグループの傘下に入ることも明らかにした。

ソフトバンクグループの傘下には半導体設計大手の英Armも含まれる。トゥーンCEOはGraphcoreが「ソフトバンクグループ全体」の中で機能すると述べるに留めたが、今後アームとの協業の可能性は十分考えられ、今後の動向が注目される。