韓国・SK Hynixは6月30日、2028年までの5年間で半導体事業に総額103兆ウォン(約12兆円)を投資すると発表した。そのうちの約8割、82兆ウォンがHBMをはじめとするAI向けメモリ事業に充てられるという。AI向け半導体市場の拡大のなか、メモリ市場で競合する韓国・サムスン電子を逆転するため、更なる需要の獲得を目指していく。

SKグループが6月28日~29日に京畿道利川市のSKMS研究所で開催したグループ最高経営陣による経営戦略会議によって決定した。会議には現在米国出張中の崔泰源会長もオンラインで出席した。崔会長は「AIサービスからインフラまでAIバリューチェーンのリーダーシップを強化しなければならない」と強調した。

今回の投資のうち、20兆ウォン以上は忠清北道清州市に建設中の新工場・M15Xに投資する。この計画は同工場をHBM需要に対応するため、今年4月に既に公表されている案件であり、2025年中の竣工予定のため、最優先で投資されるものとみられる。

清州市のほか、SK Hynixは京畿道龍仁市、米インディアナ州にも工場を建設中であり、いずれも2027年以降の稼働開始を予定している。そのため、DRAMのシェアの確保のため、一部の工場の建設を前倒しするために資金が投入される可能性もあるとみられている。

このほか、初めて公表された計画としては、利川市のM16工場における、HBM3EやHBM4にコア・ダイとして搭載される1b DRAM生産のための増設計画、子会社であるソリダイムのQCL(クアッドレベルセル) NANDフラッシュの量産強化、AIチップとメモリを連結する統合インターフェイス技術であるCXL(コンピュートエクスプレスリンク)部門の強化などがある。

また、SK Hynixをはじめ、グループ傘下の半導体材料、エネルギー、通信などを手掛ける各企業の連携を強化するため、グループ内に「半導体委員会」と呼ばれる部署を新設することも決定した。同部署の委員長はSK Hynix CEOの郭魯正氏が務める。

半導体不況を脱却し、市場が拡大する中で大胆な投資に踏み切ったわけであるが、メモリ市場はサイクルがあるという点は懸念点でもある。つまり、AIによる市場加熱が治まると、今回の巨額投資が大きな損失の要因になりうるということである。そのため、今後、市場が悪化することがあれば、SK Hynixは投資計画を柔軟に調整する可能性もあるとみられる。