ルネサスエレクトロニクスは6月20日、GaN(窒化ガリウム)パワー半導体を手掛ける米・Transphormの買収を完了し、完全子会社化したと発表した。買収金額は3億3900万ドル(約537億円)。これによりルネサスはGaN市場に本格参入する。

Transphormは米カリフォルニア州ゴレタに本社を置く。カリフォルニア大学サンタバーバラ校とWBG業界をルーツとする技術基盤のもと、幅広い高電圧電力変換アプリケーション向けの高性能・高信頼性GaN製品の設計・製造・販売を行っており、2014年には富士通セミコンダクターのGaNパワーデバイス事業を統合し、福島県会津若松市に工場を所有している。

併せてルネサスは、既存の演算用半導体などと新しいGaN製品を組み合わせた15種類のシステムも発表。これらには、Transphormの車載グレードGaN技術を適用した2輪EV用オンボードバッテリーチャージャー(OBC)や3-in-1電気自動車ユニットなども含まれる。

同社の執行役員兼パワー半導体担当GMであるクリス・アレクサンドル氏は「ルネサスのポートフォリオにGaNが追加されたことで、“人々の生活をより楽にする”製品や技術を開発するという私たちのコミットメントを強化できた」とし、「エネルギーの節約、コストの削減、環境への負荷低減を目指し、持続可能なパワーソリューションを提供していく」と述べた。

同社は持続的かつ長期的な成長戦略の一環として、パワー半導体事業の強化を図っており、これまでに甲府工場(山梨県甲府市)でのパワー半導体300mmラインの立ち上げや、高崎工場(群馬県高崎市)でのSiC(炭化ケイ素)生産ラインの構築、Wolfspeedとの今後10年間にわたるSiCウエハの安定供給に関する契約締結などを行ってきた。同社はここにGaN技術が加わることにより、「幅広いアプリケーションに向けて、より包括的なパワーソリューションを提供する態勢が整った」と自信を示している。

出典:ルネサスエレクトロニクス ニュース