スイスの半導体大手、STMicroelectronics(ST)は6月4日、中国の自動車メーカー、吉利汽車とSiC製品に関する協力関係を加速させるため、SiCの長期供給契約を締結したと発表した。

STは今回の契約に基づき、吉利汽車の複数ブランドに対し、ミドルレンジからハイエンドのバッテリ電気自動車(BEV)向けにSiCパワー半導体を供給することで、性能向上や充電の高速化、航続距離の延長を実現し、吉利汽車による新エネルギー車(NEV)への転換戦略に貢献する。一方、吉利汽車は、STの第3世代SiC MOSFETを電動パワートレインの主要コンポーネントであるトラクション・インバータに採用し、これにより、変換効率を最大化して航続距離を延ばすなど、BEVの性能向上を目指す。

また、両社はさまざまな車載アプリケーションに関する長年の協力関係に基づいて、共同研究ラボである「イノベーション・ジョイント・ラボ」を設立。車載インフォテインメントやスマート・コックピット・システムといった自動車のE/E(電子/電気)アーキテクチャ、高度運転支援システム(ADAS)、NEVに関連する革新的なソリューションに関する情報交換および探究を目指していく。

STの中国地区セールス&マーケティング担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのHenry Cao氏は、「今回のSiCの長期供給契約と共同研究ラボの設立は、両社の長年にわたる協力関係をさらに前進させる大きな一歩となる」としたうえで、「車載機器のバリュー・チェーン全体にわたる当社のローカル・コンピテンス・センターおよび顧客との共同研究ラボにより、中国における自動車のイノベーションと転換をより的確にサポートすることができる」と述べた。また、吉利汽車中央研究所の電子・電気センター長であるLi Chuanhai氏は、「(両社の)協力関係は、スマート・カーや電気自動車、コネクテッド・カーといった開発トレンドに基づき、より未来志向の技術研究を進める両社に利益をもたらす」とし、「STがリードする車載ビジネスのソリューションを活用することで、製品性能やシステム統合、および総合的な市場競争力に関して、吉利汽車が優位性を得られることをとても嬉しく思う」と自信を示した。

STは経営戦略として中国を重視しており、2023年6月には、直径200mmのSiCウエハを用いたSiC製品を製造するため、三安光電と合弁企業を重慶に設立することを発表している。それに加え、今回の吉利汽車との協力関係強化により、SiCパワー半導体のサプライチェーンを強化し、中国での電動化を加速させる。

出典:STMicroelectronics ニュースルーム