米政府は4月15日、韓国・サムスン電子がテキサス州に建設する半導体工場に対し、最大64億ドルを補助すると発表した。米国内での半導体製造強化のため、新たに工場を建設する企業に補助金を支給する「CHIPS法」に基づいた支援となる。

サムスン電子は現在、テキサス州テイラー市に170億ドルを投じて建設中の新工場の規模を拡大し、2030年までに既存の投資規模の2倍以上となる450億ドルを投資する計画である。最初に建設した工場では2026年から4nmに加え2nmプロセスでの生産を実施する計画で、2番目の工場でも2027年から先端半導体を量産する予定である。

また、米商務部からの要請を受け、AI用高帯域メモリ(HBM)及び2.5Dパッケージングを担う先端パッケージング施設についても新工場に建設する計画であり、前工程から後工程まで一貫した生産が実現できるようになる。その他、先端プロセス開発に特化したR&D施設も建設するという。テイラー工場全体で最大2万人以上の直接・間接雇用を創出できるとしている。

これに加え、既存のオースティン市の工場の拡大にも補助金が充てられる。オースティン工場では主に航空宇宙・防衛・自動車産業向けの最先端FD-SOIプロセス技術の生産拡張を行う予定であり、米国防部からの委託生産も行う見込みである。

今回、サムスン電子が受給する補助金の規模は、米・Intel、台湾・TSMCに次いで3番目に大きいものとなる。一方で、投資額に対する支給率では最大となる。

TSMCが米・NVIDIAや米・AMDのAI半導体の受託製造を独占している状態であり、アリゾナ州に新工場も建設中である。但し、パッケージング施設の建設については否定的な立場を示している。サムスン電子は新工場の建設により、先端パッケージングまでの一貫生産という強みを持つことでTSMCに追随しようという構えである。

AIの急速な普及と米国の経済安全保障戦略を背景に、米国内での熾烈な競争が始まろうとしている。