オーストリアの半導体製造装置大手EVGは、2023年12月7日、EVG850NanoCleaveレイヤー剥離装置を発表した。

このEVG850 NanoCleaveシステムは、赤外線(IR)レーザーと量産(HVM)対応プラットフォームから、特別に形成された無機剥離材料を用いて、シリコン支持基板から接合層、成膜層、または成長層をナノメートル精度で剥離することが可能としている。これにより、EVG850 NanoCleave はガラス基板を使用することなく先端パッケージング向けの超薄型チップレット積層が可能となるとともに、先端ロジック、メモリ、パワーデバイス製造を含む前工程での極薄チップの3次元積層を行うことができるとしている。

EVGでは、仮接合用有機接着剤を塗布したガラス支持基板上にデバイス層をビルドアップで形成し、紫外線(UV)波長レーザーを用いて接着剤を分解してデバイス層を剥離した後、最終製品のウェーハに永久接合する従来の工法は三次元実装の分野で確立されているものの、Siに特化した半導体製造装置ではガラス基板の処理が難しいことと、有機接着剤は通常、処理温度が300℃以下に制限されることから、仮接合プロセスは後工程に限定されてきたとしている。

しかし、EVG850 NanoCleaveは赤外線レーザーと無機の剥離材料を利用することで、ナノメートル精度でシリコン支持基板からのレーザー劈開を量産環境にて可能とし、さらにガラス基板や有機接着剤が不要となり、極薄層のトランスファーやそれに続くプロセスで必要とされる前工程との互換が可能になるとしている。今までは仮接合プロセスが用いられなかった前工程でも、EVG850 NanoCleaveの高温互換性(1000 °Cまで)によってプロセスが可能となる一方、常温でのIR劈開工程ではデバイス層とキャリア基板の完全性が確保されるという。また、レイヤー・トランスファー・プロセスにより、シリコン支持基板の研削、研磨、エッチングに伴う高価な溶剤も不要になるとしており、コストの削減も可能になるとみられる。

無機材料を用いた仮接合材料としては、三井金属鉱業が発売する事前に剥離機能層とTi/Cuのシード層をキャリア上に成膜した先端パッケージ用キャリア、HRDPが存在しており、先端パッケージに取り組む大手半導体メーカーで開発が行われている。