米国政府は10月17日、先端半導体の対中輸出規制を強化する方針を発表した。現状の規制で抜け穴となっている部分をふさぎ、中国が先端半導体及び製造装置を輸入できないようにする。

バイデン政権は2022年10月に、AIなどに使用され、軍事システムへの転用が可能な先端半導体やその製造装置の中国への輸出を原則禁止していた。但し、すべてのAI半導体の輸出が禁止されたわけではなく、規制の基準に満たないものは当局の許可を経て輸出が可能となっていた。今回の規制強化により、こうした基準に満たないものについても一部の製品が規制の対象に含まれることとなった。

この規制強化により、米半導体大手のNVIDIAが最も大きな影響を受けるとみられる。同社は証券取引所に提出した書類の中で、同社が中国向けに開発したAI用半導体「A800」、「H800」の販売が阻害されると説明した。また、同社はデータセンター向け半導体の売上の25%を中国から得ており、規制の影響は必至であるとみられる。

また、今回の規制では中国・マカオに加え、ロシア、イランなど、中国と関係が近い21の国や、世界各地にある中国企業子会社にも規制の対象を拡大する。これにより、第三国経由の迂回ルートを封じる狙いがある。

中国商務部の報道官はこの措置を受け、「米国の不適切な規制により、各国のチップやチップ機器、材料、コンポーネント企業間の通常の経済貿易交流が著しく妨げられ、市場ルールが著しく損なわれている」とし、「ルールと国際経済貿易秩序を脅かし、世界の産業チェーンとサプライチェーンの安定を深刻に脅かした」と批判した。また、半導体の対中輸出規制を解除しなければ、「自国の合法的な権利と利益を断固として守るため、あらゆる必要な措置をとる」と強調した。

既に中国は対抗措置として10月20日に電気自動車(EV)用のリチウムイオン電池の材料となる黒鉛(グラファイト)の輸出を12月から規制すると発表している。今後更なる規制強化に踏み出す可能性もあり、今後の動向が注目される。