ソフトバンクグループ傘下の半導体開発会社、英・Armは8月21日、米・NASDAQ市場に上場申請したと発表した。上場は9月中に行われるものと見られ、米で今年最大規模の上場となる見通しである。

同社はスマートフォンなどで使われる、SoC(System on a chip)やCPUの製造に必要なアーキテクチャを開発・供給しており、米・アップルや韓・サムスン電子等が主要顧客である。元々は英ロンドン証券取引所の上場企業だったが、ソフトバンクグループが2016年9月にこれを買収したことで上場が廃止されていた。その後、ソフトバンクグループは2020年9月に同社をNVIDIAに売却する計画を発表したが、米連邦取引委員会(FTC)などの規制当局から強い反発を受け、同計画を断念、2022年2月に売却契約を解消し、IPOを目指すとした。スマートフォンメーカーが同社の半導体設計の所有権を保持することでライバル企業が競争上の優位性を獲得するのを阻止する狙いがあるとみられる。

上場時の時価総額は600億ドルを超えると見られている。市場に売り出す株式は一部にとどまり、ソフトバンクグループが株式の多くを引き続き保有する見込みである。

ソフトバンクグループの孫正義社長は、今年6月の株主総会で、「買収後には大枚をはたいてお金をドブに捨てたと言っていた人もいるが、いよいよArmは爆発的な成長期に入った」と述べ、今後の会社の成長性に強い期待を示していた。

但し、大きな課題も存在する。半導体設計にRISC-Vを採用する企業の増加は、Armの脅威となる。同社に近しい人物は、スマートフォン市場では引き続きArmが優位性を維持しているが、ローエンドでRISC-Vへの移行が引き続き加速すれば、モバイル分野でもArmの優位性が脅威にさらされると懸念している。

特に同社の売上高全体の4分の1を占めるという中国市場では、同社のライバル企業各社が米中関係悪化などを背景に、RISC-Vや代替設計アーキテクチュアを採用するようになったのに加え、Arm Chinaは独立経営されているため、今後、中国市場での大きな減退が予測される。こうした影響により、同社の今後の成長は不透明であり、今後の動向が注目される。