米半導体大手のIntelは8月16日、イスラエルの半導体受託生産企業のTower Semiconductor(Tower)を54億ドルで買収する計画を断念する旨を発表した。契約期限内に必要となる規制当局の承認を得られなかったことが原因とみられる。

買収計画は2022年2月に発表されており、両社の取締役会において全会一致で承認されていたが、中国の規制当局からの承認が得られずにいた。2023年4月や7月にはIntelのCEOであるPat Gelsinger氏が訪中し、本件に関する協議が行われていた模様だが、結局契約期限である8月15日までに承認を得られず、買収契約を終了することで合意し、条項に従いIntelはTower側に3億5,300万ドルの契約解除金を支払うことになる。

Intelは経営の立て直しのため、製造関連の戦略「IDM2.0」を掲げ、ファウンドリー事業を強化し、2021年から10年以内に世界第2位の外部ファウンドリーになることを目指している。今回の買収は同事業強化の柱の一つであった。買収対象のTowerは高付加価値アナログ半導体ソリューションのファウンドリーとして、シリコンゲルマニウム(SiGe)やBiCMOS、ミックスドシグナル/CMOS、RF CMOS、CMOSイメージセンサー、非画像センサー、統合電源管理、MEMSなどの幅広いアナログ技術を提供している。また、同社はイスラエルと米のほか、ヌヴォトンテクノロジージャパンとの合弁により日本に3カ所の製造施設を有しており、Intelは買収により、事業拡大と共にTowerのアジア顧客基盤の獲得を狙っていたが、買収が白紙となったため、同社はファウンドリー事業の見直しを迫られることになった。

今回の買収計画の白紙化には、半導体をめぐる米中対立が大きく影響している。本計画が成立すると、自国ファウンドリーを全面支援する中国にとっては強力なライバルを作ることになるため、承認を拒否したということである。なお、前例として、半導体製造装置最大手の米アプライドマテリアルズが2021年のKOKUSAI ELECTRIC買収において、中国の規制当局からの承認が得られずに計画が頓挫した事例がある。それに続いてIntelのTower買収が失敗したことにより、今後半導体業界で大型の買収は難しくなったとの見方が出ている。