ソニーグループは、米ロサンゼルスで1月5日〜8日の期間で開催された世界最大の家電見本市CES 2022において、2020年に発表した「Vision-S」のSUVバージョンと呼べる、「Vision-S 02」を発表した。この車両は、「Vision-S」と同じEV/クラウドプラットフォームを採用しながら、7人乗車を可能としたものである。


また、同社の吉田憲一郎社長が、EV事業の本格的な立ち上げのために、新会社「ソニーモビリティ株式会社」を2022年3月に設立することを発表した。世界がエンジンからにEVにシフトする過程で、自動運転や自動車のエンターテインメント化も大きく進化し、半導体関連産業との親和性は高まっている。

ソニーは、イメージセンサーシェアで世界1位を維持し、車載用のイメージセンサーやSPADセンサーを新規に開発し、ボッシュやデンソーといった大手サプライヤーや、トヨタや日産といった完成車メーカーに向けても供給するなど、車載用カメラモジュールのシェアを伸ばすために積極的に攻勢をかけている。車載向けカメラモジュールの市場成長率は、モバイル向けカメラモジュールの6%と比較して、2025年までに34%と大きく成長を見込んでいる。一方で、ソニーの車載用イメージセンサーは1位の米On semiconductor、2位の中Omnivisionから大きく離されて3位に甘んじている。自社の車に、自社の安全システムを搭載すれば、イメージセンサーのブランド力向上にもつながる。

ソニーはエレクトロニクス業界では先駆けて、2020年1月に開催されたCESにおいて、Vision-Sを発表して世界の注目を浴びた。その後もVision-Sで公道実験を行うなど、車載システムの進化のために、実験を繰り返してきた。今回のCESでは、ドイツの携帯電話キャリアであるVodafone Germanyと協同で5Gシステムを用いた遠隔走行試験を実施したことを発表。その内容はドイツにあるVISION-S に搭載されたテレマティクスシステムを用いて映像・制御信号を低遅延で東京へ伝送し、東京ではその映像を基に、ゲーム用コントローラを改良したステアリングとペダルを操作し、スムーズな車両操作を実証したという。

これらカメラやセンサーの他に、ソニーが持つ、既存の自動車メーカーにはない強みがエンターテインメントシステムである。ソニーでは、Vision-Sにおいて、車内360°に広がるスピーカーを各座席に備え、ユーザーの上質な体験をサポートする。

日本には、現在ではトヨタをはじめとした世界で戦える自動車メーカーが揃っているが、すでに時価総額でトヨタの3倍以上となる米テスラ、今後EVを販売すると言われている世界一の時価総額を誇るアップルなどの新興企業の動向や、インフラの整備次第では、一気にこれまでのシェアを奪われて自動車大国である日本の形勢が逆転されかねない。ソニーが既存の自動車メーカーが持たなかった視点を注入することで、国内の自動車産業は新たな視点を見つけられる。また、ソニーとしても、国内自動車産業の豊富なリソースを活用することで、より良い車の製造が行えることや、エンターテインメントシステムやカメラモジュール、ToFセンサーのシェア拡大にも繋げられ、日本の自動車産業全体を見ても大きな出来事といえるのでは無いかと考えられる。