ソニーは、SPAD(Single Photon Avalanche Diode)画素を用いた車載LiDAR向け積層型直Time of Flight(dToF)方式の測距センサを開発、2021年2月13日(土)から開催されているISSCC(国際固体素子回路会議)において発表した。
SPADとは、入射した1つの光子(フォトン)から、雪崩のように電子を増幅させる「アバランシェ増倍」を利用する画素構造で、弱い光でも検出することができる。光源から発し対象物で反射した光が、センサに届くまでの光の飛行時間(時間差)を検出し、対象物までの距離を測定するdToF方式の受光素子として用いることで、長距離かつ高精度な距離測定が可能となる。
今回の開発品は、ソニーがCMOSイメージセンサ開発で培ってきた裏面照射型、積層型、Cu-Cu接続などの技術を活用することにより、SPAD画素と測距処理回路を1チップ化し、小型ながら高解像度を実現している。裏面照射型のSPAD画素構造を用いた画素チップ(上部)と、測距処理回路などを搭載したロジックチップ(下部)を、Cu-Cu接続を用いて一画素ごとに導通している。これにより、光を取り込む画素以外の回路部を下部に配置することで、開ニコン口率を高め、22%の高い光子検出効率を実現。チップサイズは小型ながら、10μm画素サイズで有効画素数約11万(189画素×600画素)の高解像度化を実現した。
これにより最大300mの距離を15cm間隔で、高精度かつ高速に測定が可能となる。また、さまざまな温度環境や天候など、車載用途に求められる厳しい条件下での検知・認識による信頼性の向上や、1チップ化することによるLiDARの低コスト化に貢献する。
ソニーは、光源から発した光をMEMSミラーで走査するMEMS方式に本開発品を搭載したLiDARも評価用として開発し、顧客やパートナーに向けて提供を開始している。