佐賀大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、ダイヤモンドセミコンダクターからなる研究グループは2025年12月8日、次世代のパワー半導体材料であるダイヤモンドを用いた高周波半導体デバイスを作製し、世界最高レベルの120GHzで増幅動作を確認したと発表した。

今回の研究は文部科学省の「内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム(スターダストプログラム)」の委託事業および情報通信研究機構(NICT)の「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業の要素技術・シーズ創出型プログラム」に基づくもの。スターダストプログラムは2023年度から5カ年で宇宙向けの人工衛星搭載の送信用マイクロ波電力増幅デバイスの実用化を目指しており、その中で、従来のSi、SiC、GaNと比べ、放熱性や耐電圧性、放射線耐圧に優れ、宇宙空間でも安定した動作が期待されるダイヤモンド半導体デバイスに注目した。また、ダイヤモンド半導体デバイスは、Beyond 5G・6G基地局からの送信出力を飛躍的に向上させるためのブロードバンド化に向けたデュアルユース技術としても期待されている。

特にBeyond 5G・6Gインフラ向けの用途では199GHz・10OWレベル以上の高周波・高出力が必要となっているが、これらの周波数帯域では、半導体デバイスがまだ数少なく、現在も一部では真空管が用いられているが、真空管は寿命が短く、信頼性も低いという欠点がある。

研究グループはまず、ダイヤモンド半導体デバイスのゲート絶縁膜の原料であるトリメチルアルミニウムを高純度化。これにより、同膜の耐電圧が向上し、動作をオフにした際の耐電圧は世界最高の4266Vに向上した。また、電子線描画技術により、T型という微細なゲート電極(寸法157nm)を作製し、トランジスタの動作周波数を向上。開発したデバイスの電力利得(U)を測定したところ、120GHzという高い数値を得た。これはマイクロ波帯(3~30GHz)、ミリ波帯(30~300GHz)域で増幅動作可能であるということを示しているという。

今後は、非常に堅牢な材料であるダイヤモンド向けの独自のワイヤーボンディング、パッケージングなどの後工程技術の開発や、宇宙環境や地上での動作実証に向けた研究を進め、2026年1月から世界初となるダイヤモンド半導体デバイスのサンプル製造・販売をダイヤモンドセミコンダクターより順次開始するとしている。

出典:佐賀大学 プレスリリース