半導体ウエハの加工装置を手掛けるディスコは5月15日、レーザーによるインゴットスライス技術「KABRA」を応用したダイヤモンドウエーハ製造向けプロセスを開発したと発表した。同技術を採用した加工装置はSiC向けで2017年に既に出荷しており、GaNウエハにも適用可能であることも確認済みであったが、今回、ダイヤモンドにも適用可能になった。

ダイヤモンドはバンドギャップが広く、絶縁破壊電界と熱伝導率が非常に高いなど、パワー半導体材料として優れた特性を備える。パワー半導体材料の指標とされる「バリガ性能指数」はSiCの80倍以上、GaNの10倍以上とされ、「究極の半導体材料」とも呼ばれている。

この特性を活かすべく、ダイヤモンドウエハによるパワー半導体開発が進んでいるが、非常に硬質な材料であるために機械的な加工は困難とされ、ウエハスライスにはレーザーが用いられてきた。しかしながら、従来のレーザースライス方式ではインゴット側面から加工を行うためインゴット径に制約があり、大口径化が困難だった。

そこで同社は、自社のプロセス技術「KABRA」を適用可能にした。同技術では、まず、インゴット内部に上面からレーザー光を連続的に照射して分離層を任意の深さに形成する。次に、同層を起点にしてウエハを剥離する。その後、剥離したウエハを指定の厚さまで研削してから出荷する。なお、剥離後のインゴットについては、次のレーザー照射に備え、その上面を別途研削する。こうした作業を繰り返すことで、1つのインゴットから複数枚のウエハを製造可能とする。

同技術によるダイヤモンドウエハのスライスにかかる時間は従来技術に比べて半分以下になる。そのため、口径が大きいウエハ加工にも向いており、現在入手できる最大の口径である50mmを超えるインゴットにも対応可能であるとしている。また、100µm以下の薄片での切り出しも可能になっている。

同社によれば、現在、テストカットを受付中とのことである。

出典:ディスコ ニュース