国立大学法人 佐賀大学の理工学部 嘉数研究室は、2023年4月17日、世界初のダイヤモンド半導体デバイスのパワー回路を開発したことを発表した。佐賀大学によると、ダイヤモンドは、これまでのGaNやGaAs、InPと比較しても高い周波数、高電圧での動作を可能としている。将来的には、Beyond5Gの基地局増幅器、通信衛星、放送地上局への利用が期待されている。そして、ダイヤモンドを用いることで、10ナノ秒の高速スイッチング動作を実現することが可能だとしている。

今回のダイヤモンド半導体パワー回路は、ダイヤモンド半導体デバイスとして世界最高出力電力となる875MW/cm²、3659Vもの出力電圧を達成した。

また、これまではダイヤモンド半導体は、パワー回路として動作させた場合、素子劣化は早く、長時間動作は困難で、実用化は容易ではないと報告されてたが、今回の研究では190時間の連続動作を行なっても特性の劣化はなかったと発表した。

今回のダイヤモンド半導体デバイスは、チップサイズは8mm□で、電極とプリント基板の間に佐賀大学で開発した方法で金線を使ってワイヤボンディングを行い、パワー回路技術を開発した。これにより実用で重要なスイッチング特性や寿命試験などの動的な特性を測定することが可能となった。

また、ダイヤモンド半導体チップの構造は下図のようになっている。

今後、佐賀大学では開発したダイヤモンド半導体パワー回路で、特性変化の物理的機構を明らかにするとともに、その対策を講じたダイヤモンド半導体デバイスの作製を行っていき、実用化を目指した研究開発を加速していくとしている。