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GNCレター
信越化学工業は2025年11月13日、同社が開発した300mm GaN(窒化ガリウム)用のQST基板のサンプル評価において、同基板を用いた5㎛厚のHEMTデバイスが、300mm基板として世界最高記録となる650Vを超える高耐圧を達成したと発表した。
QST基板は米QROMISが開発したGaN成長専用の複合材料基板。GaNは従来のシリコン(Si)に比べて効率的に電力を制御できる一方、シリコンウエハ上へのGaN成長は大口径になるほど反り等の課題により生産歩留まりが低くなり、実用的な量産が困難であった。これを解決する基板として開発が進められているのがGaNと熱膨張係数がほぼ一致し、成長時の反りやクラックを抑制できるQST基板である。
信越化学はQROMISのライセンスのもと、150mm、200mmQST基板及び様々な基板サイズのGaN on QSTエピタキシャル基板を製造してきた。また、2024年9月からはQROMISと連携し、300mm QST基板のサンプル出荷を開始した。
また、信越化学とQROMISはベルギーの半導体研究開発機関imecの最先端300mm CMOSファブ向けに300mm QST基板を提供。imecは同基板を用いたGaNパワーデバイスの開発を進めてきた。初期評価の結果、300mm QST基板上に Aixtron製のHyperion MOCVD装置を用いて5㎛厚のGaN HEMT構造を作製、この試料がSEMI規格である650Vを大きく上回る800V以上の破壊電圧を達成したという。この結果は、QST基板が大口径であってもGaNの結晶を成長させる性能を安定して発揮できることを示している。
高電圧に耐えられることにより、電流を減らし電力消費を抑えることが可能になる。消費電力の多さが課題となっているデータセンターの省エネルギー化や電気自動車(EV)の車載充電器など、用途は多岐にわたる。
信越化学は2、3年以内に300mm基板の量産体制を整える方針である。また、imecと協力し、1,200V以上の更なる高電圧への耐性も目指すなどして用途を広げていく。
出典:信越化学工業 ニュース
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