• 東芝デバイス&ストレージは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトにおいて、次世代パワー半導体デバイス製造技術開発事業にテーマ名「次世代高電力密度産業用電源(サーバー・テレコム・FA等)向けGaNパワーデバイスの開発」と、「次世代高耐圧電力変換器向けSiCモジュールの開発」で応募し、共に採択されたことを発表した。

「次世代高電力密度産業用電源(サーバー・テレコム・FA等)向けGaNパワーデバイスの開発」では、現在のスイッチング電源では主にSiパワー半導体が用いられているが、電力密度の向上が頭打ちになっており、優れたオン抵抗と高周波特性を持つGaNパワーデバイスを用いることで、機器の低損失化や、高出力化、冷却ユニット削減や高周波スイッチングによる小型化といったブレイクスルーが期待される。本研究では、2022年度~2028年度の間に、高品質・低コスト化のためのエピタキシャル成長技術や、新構造のGaN-FET(電界効果トランジスタ)及び周辺回路の開発を行い、Siパワーデバイス並みの使いやすさを備えたMHzスイッチングが可能なGaNパワーデバイスを開発する。国内の大手電源メーカーと連携し、本事業で開発したデバイスを用いて産業用スイッチング電源応用の検証を行い、スイッチング電源市場の要求を満たすGaNパワーデバイスを早期に市場に提供できるよう努めるとしている。

また、「次世代高耐圧電力変換器向けSiCモジュールの開発」電力を供給、制御する役目を果たすパワー半導体は、HVDC(高圧直流送電システム)を含めたさまざまな電気機器の省エネルギー化やカーボンニュートラルの実現に不可欠なデバイスであり、自動車の電動化や産業機器の小型化などを背景に、今後も継続的な需要拡大が見込まれる。その中で、SiC(炭化ケイ素)デバイスはその高耐圧性と低損失性から採用拡大が期待されているデバイスの一つである。今後の普及のためには性能・コスト・品質のトレードオフを改善する必要があるとし、今回採択された研究では、2022年度~2030年度に、より効率的な直流送電向けのパワー半導体の開発を進め、SiCデバイスを用いた電力変換器PoC(概念実証)検証による電力損失50%低減およびシリコンデバイスを用いた場合と同等コストの実現を目指すとしている。
その中で東芝デバイス&ストレージは「次世代SiCデバイス開発」と「高耐圧高放熱パッケージ開発」を行う。具体的には、性能・コスト・品質のトレードオフを改善する高品質エピタキシャル結晶成長の技術開発やスーパージャンクションなどの構造を採用したデバイス開発を進めるとともに、SiCデバイスの特性を引き出す小型・軽量な高耐圧高放熱パッケージの開発を行っていく。
一方、東芝エネルギーシステムズは、東芝デバイス&ストレージが開発したSiCモジュールを用いて「電力変換器PoC検証」を行う。これは、電力変換器としての性能を確認するために、変換器を試作し、変換損失の高精度な測定等を行うとしている。

東芝デバイス&ストレージでは、2022年度の設備投資金額を約1,000億円までに引き上げるとしており、2023年春から生産子会社の加賀東芝エレクトロニクス(石川県)敷地内で新製造棟の着工を予定し、建屋や製造装置への投資を始める。既存製造棟内にも新ライン導入を進め、パワー半導体の生産能力を全体で約2.5倍に高める目標を立てている。また、前述のSiC及びGaNの生産能力増強にも投資されると見られる。

今後東芝デバイス&ストレージは、パワー半導体とデータセンター向けHDDを2本柱にしていくとされている。