米Cadenceは9月5日、スウェーデンの測定用ハードウェア及びソフトウェアメーカーである、Hexagon ABのDesign&Engineering(D&E)事業を買収すると発表した。買収金額は約27億ユーロで、70%を現金で、30%をCadenceの普通株式のHexagonへの発行によって支払う。買収対象にはエンジニアリングシミュレーションおよび解析ソリューションのパイオニアであるMSCのソフトウェア事業も含まれている。この買収によりCadenceはIntelligent System Design戦略を加速させ、System Design&Analysis部門のポートフォリオを大幅に拡充する。また、HexagonのD&E技術と人材を取り込むことで、数十億ドル規模の構造解析市場へのプレゼンスを更に深める。

Hexagon ABは構造解析とマルチボディダイナミクスシミュレーションの業界標準として広く認知されるフラッグシップ製品「MSC Nastran」と「Adams」を擁し、特に航空宇宙や自動車分野における機械システムの設計・検証において強みを持つ。また、「Adams」のマルチボディダイナミクス機能は、ロボティクスやフィジカルAIなどの分野でも重要になるとみられている。同社は世界50か国以上に拠点を持ち、約24000人の従業員が在籍している。なお、買収対象であるD&E事業は2024年に2億8000万ドルの収益を生み出し、1100人以上の従業員が在籍する。

今回の買収により、Hexagonの持つマルチフィジックス解析、システムダイナミクス、金属成形、自動運転シミュレーション技術などのソリューション群がCadenceのポートフォリオに加わる。また、独Volkswagen、独BMW、トヨタ自動車、米Lockheed Martinなど、HexagonのD&Eソリューションを採用している大手航空宇宙・自動車メーカーやTier1サプライヤーを含む幅広い顧客基盤に対応できるようになる。

Cadenceの社長兼CEO(最高経営責任者)を務めるAnirudh Devgan氏は今回の買収について、「HexagonのD&E事業の世界クラスのシミュレーション機能を取り込むことで、電磁界や流体から構造と動きに至る物理振る舞いの全スペクトルを網羅するIntelligent System Designのビジョンを拡大する」とし、「顧客が次世代の複雑で融合したシステムを設計するうえで極めて重要な一歩となる」と述べた。

今後、規制当局の承認を受けた後、2026年第1四半期の買収完了を予定している。

出典:Cadence Press Release