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GNCレター
EDA(電子設計自動化)ツール大手の米Cadenceは3月18日、AIを用いたソリューションの開発を加速するため、米NVIDIAとの複数年にわたる連携を拡大すると発表した。両社はAIデータセンターのパフォーマンスや電力効率の改善、創薬の加速などに向け、これまでにも連携を続けてきた。今回、連携を拡大することにより、幅広い産業分野でのイノベーションの加速の実現を目指す。
まず、CadenceはNVIDIAの最新のBlackwellアーキテクチャを使用し、数値流体力学(CFD)のシミュレーション時間の最大80倍の短縮化(数日→数分)、Cadence Spectre X回路シミュレータの最大10倍の高速化、熱、応力、反りに関する3D-IC設計・解析の最大7倍の高速化などの課題に取り組んでいる。これにより、CFDの大きな課題の一つであった航空機の離着陸におけるシミュレーションについて、CadenceはCadence Fidelity CFD Platformを使用し、NVIDIA GB200 GPU上で数十億セルのシミュレーションを24時間以内に実行することに成功したという。Cadenceは今後もBlackwellを活用してシミュレーションの限界に挑戦し、離着陸の自動化の早期の市場投入を支援していくとしている。
また、両社は電子設計やシステム設計、科学的アプリケーション向けのフルスタックエージェントAIソリューションにおいても協力。画期的なエージェント技術を導入し、Cadence JedAI PlatformとNVIDIA NeMo 生成AIフレームワーク、新たなNVIDIA Llama Nemotron Reasoning Modelの統合により、インテリジェントな対話型AIアシスタントの開発、基礎の設計担保と検証のための深い推論、デジタル回路とカスタム回路の設計エージェントによる設計の生成と最適化を加速させるとしている。
加えて、Cadenceのグループ会社であるCadence Molecular Sciencesは、NVIDIA BioNeMo NIMマイクロサービスを、Cadenceのクラウドネイティブ分子設計プラットフォームであるOrionと連携させる試みを開始した。NIMsのマイクロサービスは、①3D de novoタンパク質構造予測のためのAIモデル ②低分子デザイン向け生成AI ③抗体特性予測のための基盤AIモデルの3つにおいてOrionの仕様を拡張し、創薬スピードを加速させるとしている。
CadenceのCEOであるDr. Anirudh Devgan氏は、「CadenceはNVIDIAの最新Grace Blackwell NVL72プラットフォーム上で、AI主導のEDAおよびシステム設計・解析ワークロードを加速する」とし、これにより、「これまで不可能であった複雑なシステムの大規模なシミュレーションを数時間で実行できるようになった」と述べた。
また、NVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は今回の連携拡大について、「シミュレーション、最適化、設計における可能性の限界を押し広げ、効率化を促進し、市場投入までの時間を短縮し、科学的発見に弾みをつける」と述べ、その意義を強調した。
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