ルネサスエレクトロニクスは2025年7月2日、高耐圧650Vの窒化ガリウム(GaN)パワー半導体を発売し、量産を開始したと発表した。新製品は同社が2024年6月に買収した米TransphormのSuperGaN技術を活用した「第4世代プラスプロセス(Gen IV Plus)」がベースとなっており、従来の第4世代(Gen IV)と比較して、ダイサイズを14%低減、オン抵抗を30 mΩまで低減し、電力効率を向上させたという。

一般的にGaNは電圧が0でも電流が流れる「ノーマリーオン」のデバイスで、安全に扱うには電圧0のときに電流が流れない「ノーマリーオフ」にする必要がある。その方法としては「E-mode」があるが、この方法ではゲート・ソース間の定格電圧が低かったり、ゲートにノイズが入りやすいなど、大電力用途には向かないという課題があった。

ルネサスが活用するSuperGaN技術では、高耐圧のD-mode GaN(ノーマリーオンのままのGaN HEMT)と低耐圧のSi MOSFETを直列に接続した「カスコード構造」を採用。E-modeで必要とされる専用ドライバを使わず、Si MOSFETを駆動するための標準的なドライバで容易に駆動できる。また、しきい値電圧が4VとE-modeより高いため、誤動作のリスクが低く、高い信頼性を有している。また、低損失なD-mode GaNの技術に基づき、ゲート電荷、出力容量、スイッチング損失、動的抵抗による影響を抑えることで、電力損失を最小限に抑えられる利点もある。

新製品のパッケージは1kW~10kW、さらには並列化による高出力なアプリケーションに適したTOLT/TOLL/TO-247の3種類を提供済み。いずれも高い放熱性を有しており、TOLTとTOLLは大電流が必要なシステムにおいて並列化を容易にし、TO-247は高出力なアプリケーションに向いているという。また、4ピン型のTO-247-4Lについても現在開発中とのことである。

新製品は800V高電圧直流電力供給アーキテクチャが注目されているAIデータセンターを中心に、無停電電源装置やソーラーインバータ、バッテリ蓄電コンピュータ、eモビリティの充電のほか、将来的には車載用OBC、DC/DCなどまで含めた3kW程度までをカバーする必要があるアプリケーションがターゲットとなる。

なお、ルネサスは現在福島県内の6インチウエーハ用ラインでGaNを生産しているが、2027年からは米Polar Semiconductorへの製造委託により、さらに生産効率の高い8インチウエーハでの生産に移行し、更なる製造拡大を目指している。

出典:ルネサスエレクトロニクス ニュースルーム