東京大学の伊藤佑介講師らとAGCによる研究グループは6月12日、ガラスなどの加工の難しい材料を、従来の100万倍高速で、かつ精密に加工する技術を開発した。これにより、ガラス基板の高速・精密加工が可能となる。

次世代半導体の開発に向け、ガラス基板の微細加工技術の開発競争が加速している。ガラス基板は高温耐性を持ち、回路パターンの歪みが少ない、平坦性があるという利点があるものの、その硬さと脆さから、微細加工が難しい欠点がある。

そのガラス基板の加工技術として、レーザー加工が注目されている。しかしガラス基板は透過性があるために加工効率が悪く、フェムト(1000兆分の1)秒単位でレーザー光を当てる技術を用いる従来手法では、深さ1mmの穴を1つ開けるために20秒がかかっていた。

そこで、同研究グループは、ピコ秒(1兆分の1)秒単位で光を出すレーザーと、マイクロ(100万分の1)秒単位で光を出すレーザーの2種類を使い、高速で穴をあける技術を開発した。まず、ピコ秒オーダーのレーザーを照射するとレーザーの通過部分に電子がたまり、ガラスの性質が変化する。次に同じ場所にマイクロ秒オーダーのレーザーを照射すると、たまっていた電子に高効率に光が吸収され、ガラスが急速に加熱されることにより穴が開くという仕組み。これにより、加工時間20マイクロ秒で深さ1mm、直径3μmの超高アスペクト比の穴あけ加工を実現した。加えて、レーザー加工時のクラックや穴形状の歪みなど、従来問題となっていた部分についても解決できたという。

同技術はガラス基板のほか、サファイア、SiC、ダイヤモンドなど、様々な材料に対して適用可能なため、宇宙分野、医用工学、物理工学など、幅広い分野への応用が期待される。同研究グループでは今後、2028年とされるガラス基板の普及に間に合わせるため、専用のレーザー加工装置の開発も進めていくという。

出典:東京大学 プレスリリース