バイデン米政権は11月21日、米ジョージア州、カリフォルニア州、アリゾナ州における先端パッケージの研究開発に対し、最大で3億ドルを支援すると発表した。国内半導体産業の支援・振興を目的にしたCHIPS法に基づくもの。

先端パッケージは複数の半導体チップをシームレスに集積し、1つのパッケージに実装することで機能を向上し、消費電力とコストを削減するものである。このようなパッケージ基板は現在米国では生産されておらず、AI向けの高性能コンピューティングや次世代通信、より効率的なパワーエレクトロニクスの実現に向けて、研究開発が急がれている。

今回受給対象となるのは、米Absolics、米Applied Materialsの2企業と米アリゾナ州立大学。それぞれのプロジェクトにおいて1億ドル以上の投資額が見込まれており、今回の米政府による助成に加え、民間からの出資も募る。

Absolics(ジョージア州コヴィントン)は30以上のパートナーとの提携により、SMART(Substrate and Materials Advanced Research and Technology)パッケージング・プログラムを通じ、ガラスコア基板製造のエコシステム構築を目指している。また、専門学校、HBCU CHIPSネットワーク、退役軍人のプログラムに研修、インターンシップ、資格取得の機会を提供することで、教育と労働力開発の取り組みを支援することを計画している。

Applied Materials(カリフォルニア州サンタクララ)は10社のパートナーとともに、次世代アドバンストパッケージングと3Dヘテロジニアスインテグレーション向けのシリコンコア基板技術の開発とスケーリングに取り組む。同社のシリコンコア基板技術は先端パッケージングにおける米国のリーダーシップを高め、エネルギー効率の高い次世代人工知能(AI)およびハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)システムを米国内で開発・構築するエコシステムの触媒となる可能性を秘める。また、米国の州立大学と半導体業界との間の研修・インターンシップのパイプラインを強化することも目指す。

アリゾナ州立大学(アリゾナ州テンペ)はFOWLP(Fan-Out-Wafer-Level-Processing)による次世代マイクロエレクトロニクスパッケージングの開発を主導している。大学内の先端エレクトロニクス・フォトニクス・コアファシリティを中心にして、商用化されていない300mmウエーハレベルおよび600mmパネルレベルの製造技術の商業的実現可能性を探っている。同社は先端パッケージングと労働力開発プログラムを半導体工場やメーカーに接続する相互接続ファウンドリーを設立するとしている。

標準技術担当商務次官兼米国標準技術研究所所長のローリー・E・ロカシオ氏は、「先端パッケージングは、人工知能のような新技術の原動力となる先端半導体の開発に不可欠である」としたうえ、「国立先端パッケージング製造プログラムの最初の投資は、米国内外で製造された先端ノードチップを米国内でパッケージングできる強固な国内パッケージング産業を創出するというCHIPS for Americaの使命における重要なニーズに対応する画期的な進歩を促進する」と述べ、今回の助成の意義を強調した。