9月27日、半導体受託生産大手の台PSMCとSBIホールディングスが半導体工場建設に関する提携を解消したことが明らかになった。宮城県黒川郡大衡村に工場を建設し、2027年を目途に車載向け半導体を量産する計画であったが先行きは不透明となった。

両社は2023年7月5日に合弁で日本国内に半導体工場を建設すると発表、2023年10月には建設予定地を宮城県黒川郡大衡村に決めていた。当時は新型コロナウイルスの感染拡大のさなかに広がった半導体不足により、2021年頃から自動車の納期が大幅に遅れるなどの影響が出ており、供給体制の強化が急務となっていた。

ところが、2023年冬ごろから潮目が変わり、車載半導体の納期はほぼ正常化し、需要が減速した。それに加え、2024年からは中国景気の悪化や各国政府の縮小を受け、電気自動車(EV)の需要も減少し、顧客確保の見通しが立たなくなった。

両社による計画の全体の投資額は8,000億円を超える見込みで、日本政府による1,400億円の補助を前提としていた。ところが、実際には事業化の見通しが立たず、補助金の申請段階まで進めなかったとみられる。PSMCによれば、日本政府は補助金支給の条件として、10年以上の量産継続を求めるが、主要株主でないPSMCが量産継続を保証するのは台湾の法令違反になるとして、日本政府の求める条件を満たせないと判断したとしている。

両社の提携解消を受けて、宮城県の村井嘉浩知事は「大変残念で、大きな衝撃を受けている」とし、「誘致の段階からSBIHDとPSMCの信頼関係を間近で見てきただけに、にわかには信じられなかった」と述べた。宮城県は両社による工場建設に合わせて関連企業の誘致や住宅の確保など、積極的に準備を進めていただけに落胆は大きい。

SBIHDはPSMCとの提携解消後も引き続き宮城県への工場建設計画は維持する方針であり、「複数の事業パートナー候補と引き続き協議・検討している」とした。村井知事も「引き続き連携を図っていきたい」としているが、PSMCに代わるパートナーを探すのは容易ではないとみられ、先行きは不透明である。