ロームは11月7日、2024年度通期の業績予想について、売上高は期初予想比6.3%減の4,500億円、営業利益は期初予想の140億円の黒字から150億円の赤字、純利益は同140億円の黒字から60億円の赤字にそれぞれ下方修正したと発表した。実際に赤字となれば、2013年3月期以来、12年ぶりとなる。

同日に発表された2024年度上半期(4~9月期)の決算では、売上高は前年同期比3.1%減の2,320億円、営業利益は前年同期の298億円の黒字から9億円の赤字へと落ち込んだ。また、純利益については投資有価証券売却益(62億円)の形状があり黒字を維持したものの、前年同期比94.6%減の20億円となった。

業績が低迷した原因となっているのは車載向けSiCパワー半導体の不振だ。BEV(バッテリーEV)普及の減速や日系自動車メーカーの中国向けの販売不振、日本国内における認証試験の不正問題を受けた自動車メーカーの減速が大きな打撃を与えた。また、ファクトリーオートメーション(FA)機器向けも在庫調整が長期化しており、低空飛行が続く。

通期予想を市場別にみると、車載向けの売上高は前年度比0.5%減の2,283億円と、従来予想の10.8%増から一転、マイナス成長になる見込みである。産機向けも同19.4%減の602億円という予想で、従来予想の12.1%減からさらに下振れとなる見込み。その他、民生向けや通信向けでもそれぞれ同3.9%減の890億円、同0.9%減の203億円とマイナス成長が見込まれる。

同社社長の松本功氏は車載向けの売上高に関して「欧州や中国では伸ばすことができているが、日本の生産台数減産はわれわれにとって非常に厳しい状態だ」と述べた。また、産機向けについては、「もともと下期に少し回復傾向となり、在庫調整が終わると考えていたが、在庫調整が長期化している」と説明。本格的な回復は2025年度以降になる見通しを示した。

同社はSiCパワー半導体を成長のカギと見定め、積極投資を実施。2023年度に過去最高の1,867億円の設備投資を実施した。2024年度も当初1,650億円を投資する計画だったが、EV市場の減速を受けて1,500億円に減額するとした。さらに2025年度は、従来1,400億円程度と想定していた投資額を1,000億円以下に抑える見通しであるという。また、宮崎県国富町に整備中の、8インチSiC基板とパワー半導体を一貫生産する新工場に関して、2024年中の基板の生産開始を目指していたが、2025年の生産開始に遅らせる。

松本氏は「先行投資のフェーズから、需要見合いの投資に変えていく」と述べ、より慎重な投資戦略への転換を図る方針を掲げた。一方で、「長期的にはEV市場は成長する。30年に(SiCパワー半導体の)シェアで30%を目指す目標は変えずにやっていく」と継続的な投資は引き続き維持していく姿勢を示した。

出典:ローム株式会社 株主・投資家情報