米Appleは、現地時間6月5日に、同社としては初となるVRヘッドセット「Apple Vision Pro」を発表した。Vision Proは、ユーザーの目と手、声によって、操作を行うことが可能だとしている。

また、Apple Vision ProのOSには、Appleが独自開発した世界初となる空間オペレーティングシステム、visionOSが搭載されている。Vision Proは2,300万ppiのマイクロOLEDディスプレイを左右に配置し、独自に設計されたデュアルチップを備えたカスタムのAppleシリコンを搭載している。このチップは、Macに用いられるM2チップと、12のカメラ、5つのセンサー、6つのマイクロフォンからの入力を処理し、コンテンツを表示させるR1チップを搭載する。R1チップは瞬きの8倍高速という12msで新しいイメージをディスプレイにデータストリームとして伝送する。

また、表示されるコンテンツは回転式のコントローラ「Digital Crown」を回転させることで、ユーザーはどれだけ実世界を表示するか、どれだけApple Vision Proの画面を表示するかを調整することが可能となる。

Apple Vision Proについて、同社のティム・クックCEOは、「今日は、コンピュータの歴史にとって新たな時代の幕開けとなる記念すべき日となるでしょう。Macが私たちにパーソナルコンピューティングをもたらし、iPhoneがモバイルコンピューティングを実現したように、Apple Vision Proは私たちを空間コンピューティングの世界へと導きます。Appleが数十年にわたって生み出してきた革新的な技術を受け継ぎながら、大きな変革をもたらす新しい入力操作システム、数千もの画期的なイノベーションを実現するVision Proは、これまで生み出されたどのようなものとも異なる、時代の数年先を進む製品です」とコメントした。

Apple Vision Proの販売価格は3,499ドル(約48万6,300円)となり、来年初旬から米国で販売が開始される。

このApple Vision Proの発表前には、MetaがVRヘッドセットの最新版となるMeta Quest 3を発表した。このMeta Quest 3は、Qualcommと共同開発したVR用チップである次世代Snapdragonチップセットを初めて搭載する。この次世代Snapdragonチップセットは、Meta Quest 2で採用している前世代SnapdragonのGPUに比べて2倍以上のグラフィック性能を実現するという。MetaとQualcommは2022年9月に将来のVRデバイスの開発に向けて戦略的提携を行なっていた。

Meta Quest 2は価格は74,800円と、Apple Vision Proの1/6以下の設定となる。Meta Quest 3はApple Vision Proと異なり、従来通り左右に持つコントローラでの操作となる。

このMeta Quest 3の発表に先立ち、カリフォルニア州サンタクララで米国時間5月31日から6月2日にかけて開催されたARを主要テーマとした開発者会議「Augmented World Expo(AWE)」で、Qualcommはヘッドセットやスマートグラスをスマートフォンとよりスムーズに連携させるための新たなステップを提示した。これまで同社は、開発者向けプラットフォーム「Snapdragon Spaces」のもとで、ARグラスとAndroid搭載スマートフォンの橋渡しをするソフトウェアの開発を促進してきたが、同社は今回、Snapdragon Spacesの新機能「Dual Render Fusion」を発表した。これはコネクテッドグラスとの連携を通じて、AndroidアプリにAR機能を追加するのをさらに容易にすることを目指すものとなる。

スマートフォンを世界に普及させたAppleが、万を期してVRゴーグルを発表した。価格は高価であるものの、コントローラを廃すなど妥協のない製品である。一方、後に紹介したMeta quest 3や今年の2月に発売を開始したソニーのPSVR2は、Apple Vision Proと比較すると大幅に安価で、10万を切る価格で販売されている。今後、コンテンツの拡充、スマートフォンとの連携や、VRゴーグル単体で出来ることが増えることで、VRゴーグルがPCやスマートフォンに並ぶ必需品となり得るかが注目される。