日本政府は6月2日、成長戦略原案を公表し、半導体産業の国内誘致を進めるための政策を総動員する方針を示した。

この会議資料には、世界の半導体市場は拡大しているものの、日本の半導体売上高シェアは1988年の50.3%から2019年は1/5の10.0%まで低下したことが示されている。

更に、10nm未満の先端半導体の製造能力は台湾が92%を占め、日本は28〜45nmで5%、45nm以上で13%の製造能力を持つが、22nm以下では製造能力を有していない。

一方で、5G〜6Gの通信高速化や、IoT、自動運転、更には軍事などで先端半導体市場が高まり、台湾のTSMCが示すように、先端半導体産業を充実させることは、今後の経済を活性化させ、国力を維持するためにも必須となる。

よって、日本政府は「先端半導体の設計やその製造技術の開発を研究開発基金等で積極的に支援する。」
「他国に匹敵する先端半導体の生産拠点の立地を推進し、確実な供給体制を構築していく」事を原案に盛り込んだ。

現時点で、日本より高い半導体製造能力を持つ、台湾や韓国、米国といった国々は、すでに国家を挙げて半導体産業を支援する取り組みを兆円単位で広げる中、日本では先端半導体開発に向けても数百億程度の支援にとどまっていた。

一方、最近の動きでは世界の積極的な取り組みにも押され、安倍晋三前首相が自民党半導体戦略推進議員連盟の会議で「半導体は死活的に重要だ。異次元のものをやらなければならない」と発言、その後、日刊工業新聞がソニーとTSMCの先端半導体向けの合弁工場を建設する報道をするなど、国内で先端半導体工場を建設する機運は確実に高まっている。

世界有数の製造装置、先端材料メーカーを持つ日本なので、その能力を活かして製造拠点を造り、製造装置、先端材料とともに製造能力を高めることで、今年前半に自動車を始め様々な産業を襲ったサプライチェーンの不安定さを解消することを期待したい。

この成長戦略原案は、与党との調整を経て、6月中に閣議決定する。

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